抄録
2種類のアパタイトセラミックス(OHAp, LiAp)の弾性率を直方体共振法(Rectangular Parallelepiped Resonance method, RPR法)で測定した.OHApセラミックスは合成したハイドロキシアパタイト粉末を1, 200℃で1時間焼結させて作製した.LiApセラミックスは焼結助剤として2.8wt%のLi3PO4をOHAp粉末に添加し, 1, 050℃で10分間焼結させた.OHApとLiApの密度はそれぞれ3.109, 2.965g/cm3であり, RPR試片の辺長は約2〜5mmであった.焼結体に選択配向が存在するかどうかを明らかにするために, 試辺は立方晶の対称性を持つと仮定して, 弾性率C11, C12, C44を独立に決定した.結果はOHApについてはC11=149.5, C12=57.4, C44=46.18GPaとなり, LiApについてはC11=132.9, C12=49.3, C44=41.97GPaとなった.これらの値は等方的な関係, C44=(C11-C12)/2を実験誤差内で満足していたため, 試片作製において如何なる選択配向も導入されなかったとみなした.今回の測定からRPR法は比較的小さな試片に適用できること, および理論共振周波数が通常のパーソナルコンピュータでも計算可能なため, 歯科用セラミックスの弾性的データを得るために大いに有用であることが示唆された.