抄録
無血清培養下での細胞毒性試験法を確立するために, 無血清培養液と10%血清添加培養液を用い, 10種類の金属イオンの細胞毒性試験を行った.実験にはL-929細胞を用い, 各金属イオン濃度に対する細胞生存率の変化をニュートラルレッド法より求めた.その結果, 無血清培養では, 50%細胞阻止濃度(IC50)から求めた細胞毒性の順位は, 強い方からCr(VI)>Pt>Co>Au≒Cu>Pd≒Cr(III)>Mn≒Ni>Moであった.一方, 10%血清添加条件では, 強い方からCr(VI)>Au>Pt>Cu>Pd>Co>Mn>Ni>Mo>Cr(III)であった.各金属イオンのIC50は無血清培養液より血清添加培養液で高かったが, 無血清培養によるIC50の低濃度側へのシフトは金属イオンの種類によって異なっていた.すなわち, 無血清培養によるIC50の低濃度側へのシフトはCr(III)で最も大きく, Auで最も小さかった.これらの結果は, 金属イオン自身の細胞毒性や血清と金属イオンの相互作用による細胞毒性への影響を知る上から, 無血清培養下での細胞毒性試験法が必要であることを示している.