抄録
関節円板の変形や穿孔を伴う顎関節症の発症では, 異常な顎関節部負荷が関連していると考えられている.しかし, 咀嚼中に顎関節部に作用する荷重の正確な値は測定されていない.そこで本研究では, 咀嚼中でのサル下顎頭表面の局所的な荷重を直接測定するために, 生体親和性の優れたHAP(ハイドロキシアパタイト)セラミックスとPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)圧電セラミックスを積層した微小圧力センサーを考案, 作製した.最初に, 試作したセンサーのキャリブレーションを繰り返し荷重条件下で行った.その結果, 19.6Nまでの荷重とセンサー積分出力の間には直接関係(r=0.9981)がみられた.次に, この圧力センサーをサルの下顎頭前上方部に埋め込み, 硬食物咀嚼中に下顎頭に作用する荷重を記録した.その結果, 下顎運動の最大開口時には2.05N, 食物粉砕時には0.42N, そして食物臼磨時には0.18Nの最大荷重が計測された.荷重がセンサー面に均一に分布していると仮定すれば, これらの最大荷重は, 各々0.29MPa, 0.07MPa, そして0.03MPaの最大圧力に相当する.