抄録
本研究の目的はグラスアイオノマーセメントからのフッ素の徐放とセメント体の崩壊との関連性を検討することである.実験材料として2種類のグラスアイオノマーセメントを用い, セメント練和から蒸留水に浸漬するまでの時間を接水開始時期とし, 同時期を5および60分とした.2週間浸漬静置後, 硬化体の表層崩壊部のコアとマトリックスをEPMAを用いて分析した.崩壊部ではマトリックスの元素量がいずれも減少し, コアでは変化を認めなかった.また, 接水開始時期5分では表層部マトリックスの減少率はフッ素が最も高く, 72.4〜73.3%で, その他の元素は7.7〜37.5%を示した.接水開始時期60分ではフッ素が同5分と同様の値を示したが, その他は0〜22.3%まで減少した.
以上の結果から, 初期崩壊時に認められるフッ素の溶出は硬化体表層のマトリックスで生じ, さらに, その溶出する割合は他の元素と比べて高いことを明らかにすることができた.