抄録
市販されている義歯床用アクリルレジンには, 餅状化時間の調節剤としてエチルメタクリレートまたはブチルメタクリレートのようなアルキルメタクリレートが少量添加されている.本研究では, アルキルメタクリレートの添加が粘弾性的性質と衝撃強さに及ぼす影響を検討した.試験片は通法にしたがって加熱重合したものと, ポリマーを加熱後加圧融着したものとの2種類とした.20〜140℃までの貯蔵弾性率と損失弾性率を測定し, さらにガラス転移温度を決定した.また, 室温でアイゾット衝撃値を測定した.エチルメタクリレートまたはブチルメタクリレートの添加量が増加すると貯蔵弾性率, 損失弾性率, 衝撃値は低下した.特に, 衝撃値は大きく低下した.このことから, 義歯床用レジンの餅状化時間の調節用としては, できるだけアルキルメタクリレートの添加量を少なくした方がよいと考えられる.