歯科材料・器械
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16 巻, 2 号
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原著
  • 五十嵐 賀世, 戸井田 哲也, 中林 宣男
    1997 年 16 巻 2 号 p. 55-60
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    象牙質を10%リン酸でエッチングした後, 水洗, 乾燥し, 30%HEMA水溶液にPhenyl-Pを溶解したプライマーを作用させた後, 光重合型レジンを接着させた試料の縦断面をSEM観察し, 収縮した脱灰象牙質を回復させるプライマーの組成と作用時間を検討した.その結果, プライマー中に溶解したPhenyl-Pは収縮した脱灰象牙質を短時間で回復させ, 脱灰象牙質のモノマーの透過性の改善に有効であることがわかった.また, Phenyl-Pは脱灰象牙質より深部にある健全象牙質を脱灰しつつ拡散するため, リン酸エッチングによる脱灰深さよりも厚い樹脂含浸象牙質を生成させることがわかった.
  • 吉田 隆一, 岡村 弘行, 長谷川 緑
    1997 年 16 巻 2 号 p. 61-72
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    義歯床を使用すると着嗅がみられ, 各種の除嗅清掃薬品が市販されている.この着嗅の原因は食渣が腐敗するためであり, レジン床に殺菌性をもたせれば, ある程度防止できる可能性がある.そこで, 今回, 銀のoligodynamic actionを利用して, アクリル樹脂に殺菌性を付与することを考えた.すなわち, 床用レジンに銀粒子を添加することによりレジンの色, 吸水, 溶解量, 抗折たわみ強さがどのように変わるかを調べた.その結果, oligodynamic actionでは銀無添加で阻止帯はなく, レジン粉に対し5%銀粒子を添加したもので0.8〜2.4 mm, 10%添加で1.3〜3.3 mm, 20%で2.1 mm〜4.0 mmの阻止帯が認められた(基準の銀で4.2 mm).銀添加によるレジン色の変化では, 添加率を増すと色差が大きくなった.また, クリアーよりダークピンクの方が色差は小さかった.吸水量と溶解量では銀の添加率を増すにつれ減少した.さらに, 抗折たわみ量でも銀の添加率を増すにつれ減少した.
  • -1, 2-ジメタクリロイロキシベンゼンの効果-
    染谷 実, 小松 光一
    1997 年 16 巻 2 号 p. 73-82
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    光重合型コンポジットレジンの耐水性の向上を目的として, 1, 2-ジメタクリロイロキシベンゼン(DMB)を合成し, ウレタンジメタクリレート(UDMA)にDMBを混合した共重合体および光重合型コンポジットレジンの機械的性質を検討した.UDMAにDMBを混合した共重合体の曲げ強さは, 試験体を60℃で30日間浸漬しても低下しなかった.これは, 共重合体の吸水率がDMBの混合によって低下したためである.また, コンポジットレジンの曲げ強さは, 吸水によって低下した.しかし, マトリックスレジンにDMBの混合したコンポジットレジンの曲げ強さの低下は, TEGDMAを混合したコンポジットレジンに比べて少なかった.このことから, 光重合型コンポジットレジンのベースモノマーにDMBを混合すると耐久性を向上することができた.
  • 蟹江 隆人, 関 英男, 増田 章久, 今泉 章, 藤井 孝一, 井上 勝一郎
    原稿種別: 本文
    1997 年 16 巻 2 号 p. 83-89
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    市販されている義歯床用アクリルレジンには, 餅状化時間の調節剤としてエチルメタクリレートまたはブチルメタクリレートのようなアルキルメタクリレートが少量添加されている.本研究では, アルキルメタクリレートの添加が粘弾性的性質と衝撃強さに及ぼす影響を検討した.試験片は通法にしたがって加熱重合したものと, ポリマーを加熱後加圧融着したものとの2種類とした.20〜140℃までの貯蔵弾性率と損失弾性率を測定し, さらにガラス転移温度を決定した.また, 室温でアイゾット衝撃値を測定した.エチルメタクリレートまたはブチルメタクリレートの添加量が増加すると貯蔵弾性率, 損失弾性率, 衝撃値は低下した.特に, 衝撃値は大きく低下した.このことから, 義歯床用レジンの餅状化時間の調節用としては, できるだけアルキルメタクリレートの添加量を少なくした方がよいと考えられる.
  • 安斎 碕, 小林 弘毅, 吉橋 和江, 中島 義雄, 西山 實
    原稿種別: 本文
    1997 年 16 巻 2 号 p. 90-100
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    本研究は, フッ素徐放性の歯科材料の開発を目的としたもので, フッ素除放性のモノマー3種を合成し, 合成モノマーを分析した.モノマーの合成は, ヘキサフルオロシクロトリホスファゼン(P_3N_3F_6)を用い, このフッ素の3〜5個をHEMAで置換して, 3種のP_3N_3(F)_<1-3>(EMA)_<5-3>を得た.IR, NMRおよび元素分析の結果, 目的物であった.3種のモノマーの屈折率は, 1.4662〜1.4718で, 粘度は1.3〜1.8Pa・sを示した.3種の合成モノマーをそれぞれMMAに30wt%配合し, これとPMMAとを混和し, 光重合してレジン重合体を作製した.フッ素徐放量および曲げ強さの測定は, レジンを水中に浸漬したのち, 経日的に測定した.レジン3種のフッ素徐放量は, 経日的に低下し, 水中浸漬1および360日で, それぞれ2.0〜3.3μg/mlおよび0.2〜0.8μg/mlを示した.レジン3種の曲げ強さは, 水中浸漬360日で74.0〜76.0MPaを示した.レジン3種のフッ素徐放量および曲げ強さの経日的変化は, 対照として用いた市販シーラントといずれも同じ傾向を示した.
  • 倉田 茂昭, 楳本 貢三, 中島 信哉
    原稿種別: 本文
    1997 年 16 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    高い光透過性を有し, マトリックスレジンとフィラー間の光の散乱が少なく, しかも高充填可能な新規オプトライトシリカフィラーを用い複合レジンを調製し, 光重合性ならびに圧縮および間接引張強さを検討した.その結果, 本フィラーを添加した複合レジンは光重合性が良好で, 硬化した複合レジンは広い波長範囲で高い光透過性を有し, 機械的強さも良好であった.
  • 幸田 起英, 土井 豊, 志水 雄一郎, 若松 宣一, 足立 正徳, 後藤 隆泰, 亀水 秀男, 森脇 豊
    原稿種別: 本文
    1997 年 16 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    37℃でpH5.00に調整した10mM酢酸溶液中で炭酸含有アパタイト焼結体の溶解挙動を調べた.得られた溶液組成を熱力学的に解析し, その結果を化学ポテンシャルプロットに目盛った.初期炭酸含有量11.8wt%の試料を焼結したものは牛脱有機骨アパタイトと同程度の溶解性を示し, 水酸化アパタイト焼結体に比べ著しく溶解しやすいことが明らかとなった.水酸化アパタイト焼結体の場合2〜3日の溶解反応後の溶液組成は計算に用いた水酸化アパタイトの溶解度積より若干高い値を示す点でほぼ溶解平衡に達した.また, 初期炭酸含有量11.8wt%の試料を焼結したものは, 溶解反応中にβ-リン酸三カルシウムやリン酸八カルシウムと同程度の溶解性を示すことも明らかとなった.破骨細胞による基材の吸収は物理化学的溶解現象ともとらえることができ, 本研究結果から炭酸含有アパタイトが骨補填材として有用なものとなることが示唆できた.
  • 門磨 義則
    原稿種別: 本文
    1997 年 16 巻 2 号 p. 114-121
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    貴金属合金に対する接着性モノマーを開発するために, 長いアルキレン鎖を有するチイラン系モノマーである9, 10-エピチオデシルメタクリレート(EP8MA)と10, 11-エピチオウンデシルメタクリレート(EP9MA)を合成した.金合金, パラジウム合金および銀合金の3種類の被着体合金を鏡面研磨してから, その表面にチイランの溶液を塗布して1日放置した.チイランの濃度が高い(1mol%)場合には, 余剰のチイランを除去するために表面を洗浄した.2個の合金の試料同士をMMA-PMMA系レジンで突き合わせ接着させてから, 熱サイクルを負荷後, 引張接着強さを測定した.チイラン中に存在する長いアルキレン鎖部分が貴金属合金に対するレジンの接着性に及ぼす影響をEP8MAやEP9MAの場合の接着強さを他の同族体のものと比較し, 検討した.長いアルキレン鎖を有するEP8MAやEP9MAは広範な接着試験条件下で安定した接着を生み出すことが明らかとなった.
  • 佐藤 和子, 吉居 英一, 本郷 敏雄, 日景 盛, 佐藤 温重
    原稿種別: 本文
    1997 年 16 巻 2 号 p. 122-127
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    Ti合金の生体適合性を明らかにするために, 含硫アミノ酸水溶液に浸漬したTi合金の溶出性と溶出物質の変異原性を研究した.4種のチタン合金(Ti-6Al-4V, Ti-5Al-2.5Fe, Ti-5Al-3Mo-4Zr, Ni-Ti)粉末各600mgを5mlの10-1 M CysteineまたはGlutathione水溶液に, 37℃, 2週間浸漬した.浸漬中に溶出した金属を原子吸光分光光度計または発光分光分析(ICP)によって測定した.Ti合金から両浸漬液中に組成金属のTi, Al, V, FeおよびNiの溶出が認められた.Ti-6Al-4V合金からのGlutathione水溶液中へのTi, Al, Vの平均溶出量は31.6, 400, 79.6pg/mg合金/1日であった.両溶液溶出物に曝露したHeLa細胞において不定期DNA合成の頻度の上昇は認められなかったが, 姉妹染色分体交換頻度はTi-5Al-3Mo-4Zr合金のGlutathione溶液溶出物に曝露したV79細胞において有意に増加した.
  • 金 明
    1997 年 16 巻 2 号 p. 128-140
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    メタルの種類およびメタル焼付面の表面あらさがオペーク陶材/メタル界面のモードI破壊靱性に及ぼす影響について, メタルには, 貴金属合金(Au-Pt系), セミプレシャス合金(Au-Pd系, Pd系)および非貴金属合金(Ni-Cr系)を採用して検討した. メタル焼付面(Ni-Cr系)の表面あらさは, サンドプラスト処理(50, 125 μm), エメリペーパー(#40)およびリテンションビーズ(100 μm)付与と, 表面処理方法を変えることによって形成させた. その結果, 以下の結論を得た. すべてのメタルの種類において, き裂進展過程における界面破壊靱性値は一定値となることが分かった. 界面破壊靱性値(GIC)は, 非貴金属合金(GIC=18.5 J/m2)の場合が最も高い値を示し, これよりもセミプレシャス合金, 貴金属合金の順に14〜20%程度低い値を示した. 一方, 表面あらさが顕著になるほど, メタル面に観察され, オペーク陶材の残存量は多く, また, オペーク陶材内の気泡の数も増加する傾向が認められた. エメリペーパー処理試験片のGIC値は, サンドプラスト処理の場合よりも10%程度大きくなるに過ぎなかった. しかしながら, リテンションビーズ付与試験片のGICは3倍以上も向上し, その効果が認められた. また, ここで採用した界面破壊靱性試験方法は, 新規歯科材料開発のための評価方法の一つとして有効であることが分かった.
  • 中村 英雄
    1997 年 16 巻 2 号 p. 141-154
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    歯科用金銀パラジウム合金の疲労強度に及ぼす熱処理の影響を検討した. 2 mmφ×14 mmの平行部と把持部を有するダンベル型試片を鋳造し, メーカー指示通りの熱処理を行った. 引張試験と疲労試験は試片に伸び計を装着して万能試験機による静的および動的試験を行った. ステアケース法を用いて片振りサイン波, 周波数5 Hzで, 105回に対する疲労強度を求めた. その結果, 疲労強度は鋳放し, 軟化, 硬化の順にそれぞれ321.5, 288.8, 320.8 MPaであり, 疲労/引張の比はそれぞれ, 0.546, 0.568, 0.428, であった. また疲労試験時の伸びの増加からクラックの発生と進展が観察された. 以上の結果, この合金の鋳造体はメーカー指示通りの硬化熱処理を行っても疲労強度が向上しないことが示唆された.
  • 伊東 孝介, 鈴木 一臣, 鳥井 康弘, 井上 清
    1997 年 16 巻 2 号 p. 155-159
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    本研究では, 著者らが合成したN-acryloyl aspartic acid(N-Asp)の樹脂含浸層の形成ならびに象牙質接着促進への効果を検討することを目的とし, 牛象牙質表面を60秒間N-AAspを含むセルフエッチングプライマー(水に20wt%濃度で溶解したもの)で処理し, エアー乾燥した非水洗群, エアー乾燥の前にN-AAspを除去するために水洗した水洗群について実験を行った.レジン接着試料を作製し, 接着強さの測定を行った.接着試料をNaOCl溶液に4時間浸漬した後, レジン-象牙質接着界面をSEMで観察した.接着強さは非水洗群では13.4(3.0)MPaで, 水洗群では7.0(2.3)MPaであった.水洗群で形成された樹脂含浸層の構造は, 非水洗群のものよりも粗造であった.この所見は, 非水洗群でのコラーゲン線維がNaOClにより溶解に抵抗したことを意味する.これらの結果から, N-AAspは堅固な樹脂含浸層を形成し, それによって良好な象牙質接着が得られることを示唆してた.
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