1997 年 16 巻 2 号 p. 155-159
本研究では, 著者らが合成したN-acryloyl aspartic acid(N-Asp)の樹脂含浸層の形成ならびに象牙質接着促進への効果を検討することを目的とし, 牛象牙質表面を60秒間N-AAspを含むセルフエッチングプライマー(水に20wt%濃度で溶解したもの)で処理し, エアー乾燥した非水洗群, エアー乾燥の前にN-AAspを除去するために水洗した水洗群について実験を行った.レジン接着試料を作製し, 接着強さの測定を行った.接着試料をNaOCl溶液に4時間浸漬した後, レジン-象牙質接着界面をSEMで観察した.接着強さは非水洗群では13.4(3.0)MPaで, 水洗群では7.0(2.3)MPaであった.水洗群で形成された樹脂含浸層の構造は, 非水洗群のものよりも粗造であった.この所見は, 非水洗群でのコラーゲン線維がNaOClにより溶解に抵抗したことを意味する.これらの結果から, N-AAspは堅固な樹脂含浸層を形成し, それによって良好な象牙質接着が得られることを示唆してた.