抄録
レジンセメントで接着した歯冠色修復材料の耐衝撃性を評価するため, セラミックスや硬質レジンを各種セメントによりステンレス鋼あるいは牛歯に接着し, 新しく考案したHK衝撃試験機を用いて衝撃試験を行うとともに, 耐衝撃性に影響を及ぼす因子について検討した.レジンセメントを用いると耐衝撃性が向上した.象牙質に対しては, 衝撃破壊エネルギーとせん断接着強さの間に強い正の相関関係が認められた.レジリエンスが高い修復材料ほど優れた耐衝撃性を示し, 衝撃破壊エネルギーは, 被着体の弾性率が高くなるにしたがって増大した.ステンレス鋼およびエナメル質には弾性率の高いコンポジット系レジンセメントが優位であり, 象牙質には弾性率の低いPMMA系レジンセメントが優位であった.サーマルサイクリング後の衝撃破壊エネルギーは, コンポジット系レジンセメントで接着した場合は変化しなかったが, PMMA系レジンセメントでは大きく低下した.