抄録
分光反射率,透過率の測定値は,測定器によって異なることが知られている.その原因の一つば,光の反射率の空間分布が一様ではないためと考えられた.そこで,陶材の分光反射率を三次元変角光度計を用いて測定した.測定の結果,表面反射光と散乱反射光の空間分布は陶材の種類により異なり,ボディー,エナメル,トランスルーセント陶材では,表面反射光が色彩に大きな影響を与えていることが判明した.表面反射光の空間分布は,陶材の種類によって異なっており一律の光トラップによって除去することは困難と思われた.この表面反射光は,試料に煽り角を15度付与することにより除去することが可能であった.しかし,散乱反射光成分も,空間的に一様に分布してはおらず,光の波長に依存しており,見る方向によって色彩が異なることが判明した. 従って,歯科用陶材の色彩の決定は,散乱反射光の測定のみでは不十分であり,散乱,表面両反射光の空間分布,分光分布について更に詳細な検討が必要である.