歯科材料・器械
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18 巻, 3 号
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原著
  • 菊竹 一代
    1999 年18 巻3 号 p. 151-169
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    ボンディング剤を塗布せず,直接コンポジットレジンと歯質とを接着させるために,新規光硬化型セルフエッチングプライマー(光硬化型プライマー)を開発した.光硬化型プライマーの成分はMDP/HEMA水溶液に水溶性光増感剤QTXを配合して試作した. 低粘度のコンポジットレジンと充填用コンポジットレジンとを積層充填したとき,エナメル質で約16MPa,象牙質で約13MPaの接着強さが得られた. 光硬化型プライマーにアミンと水溶性ジメタクリレートを配合すると接着強さは向上した.MDP/HEMA/QTX/ジメチルアミノ安息香酸エチル/水溶性ジメタクリレートからなる接着性光硬化型プライマーを用いると充填用コンポジットレジンとエナメル質で約13〜15MPa,象牙質で約10〜14MPaの接着強さが得られた.SEM観察では,象牙質とコンポジットレジンとの接着界面に樹脂含浸層が形成され,エナメル質,象牙質のレジンタグが認められた.
  • 福井 壽男, 大河内 禎一, 岸田 章裕, 山田 史郎, 張 宇宇, 長谷川 二郎
    1999 年18 巻3 号 p. 170-175
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    カメラに取り付けられた撮像レンズの被写体へ向いた光軸を平行移動して得られた複数の映像信号を記録し,光軸の相異による映像上の被写体の位置の相異を,画像処理ソフト上の操作で読み取った.その値から被写体上の長さ,被写体と光学系との距離などを同じソフト上で,幾何光学の近軸光線理論を用いた計算処理によって求めた.それによれば,次の結果が得られた. (1)映像上で目標とする点の近傍における輝度分布の急変する位置を求めて測定点とすれば,像の不明確による測定の誤差が入ることなく正確な長さ測定ができた. (2)撮像レンズより一定長さ離れた線上にある2点間の長さは正確に求めることができた. (3)撮像レンズより距離の異なる2点間の長さは映像上の長さの換算係数を用い,正確な値が求められた. (4)口腔内歯列約50mm×50mmの範囲内であれば十分正確な長さの測定ができた.
  • 新井 浩一
    1999 年18 巻3 号 p. 176-182
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    ダブルカートリッジ型シリコーンゴム印象材の内容積0.75mlミキシングチップおよび義歯床用軟質裏装材にも使用できるコンパクトな自動練和器の設計と試作を行い,その性能について検討を行った.試作自動練和器は85度傾けたモーターとネジ機構からなる.25Wスピードコントロールモーター,ギヤヘッドおよびスピードコントロールパックを用いて,3種のギヤヘッド(減速比:1/6,1/9および1/12.5)をそれぞれ組み合わせて使用し,スピードコントロールパックの抵抗値に対する流量を測定した結果,0.75mlミキシングチップおよび義歯床用軟質裏装材も使用できる最適抵抗値は,減速比1/9および1/12.5の場合,1および1.5kΩであった.また,カートリッジの全量を使用するとマイクロスイッチにより検出が行われると同時にモーターが逆回転する電気回路を作り,自動的に初期位置まで速く戻る機構の最適抵抗値は10kΩ以上であった.この結果,改良した自動練和器は臨床に応用できることが分かった.
  • 須田 勇己, 吉田 隆一
    1999 年18 巻3 号 p. 183-202
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    医療現場で殺菌や消毒を目的として使用され始めている強酸性水2種と高塩素濃度の機能水1種(オムコ7.5)を用い,純金属や充填用銀合金を72時間浸漬し,金属試料の色と重量変化,ならびに液のpH,酸化還元電位(ORP値),残留塩素濃度の変化を調べ,以下の結論を得た. 変色では,オムコ7.5で大きく,特に純銀で色差38と大きかった.重量変化では,純銀が増加,その他の金属は減少し,銀合金でも銀量が大きいものは重量が増加した.pH変化量では,オムコ7.5と純銀や銀量が多い銀合金との組み合わせで大きく,強酸性水では変化が小さかった.ORP値維持率では,オムコ7.5で高く,特にスズや亜鉛とこれらが多くの添加されている銀合金で高かった.残留塩素残留率では,強酸性水でいずれの金属も3%以下であったが,オムコ7.5では純亜鉛や亜鉛が多く添加されている銀合金で高かった.
  • 永沢 栄, 小池 君司, 吉田 貴光, 高橋 重雄
    1999 年18 巻3 号 p. 203-209
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    分光反射率,透過率の測定値は,測定器によって異なることが知られている.その原因の一つば,光の反射率の空間分布が一様ではないためと考えられた.そこで,陶材の分光反射率を三次元変角光度計を用いて測定した.測定の結果,表面反射光と散乱反射光の空間分布は陶材の種類により異なり,ボディー,エナメル,トランスルーセント陶材では,表面反射光が色彩に大きな影響を与えていることが判明した.表面反射光の空間分布は,陶材の種類によって異なっており一律の光トラップによって除去することは困難と思われた.この表面反射光は,試料に煽り角を15度付与することにより除去することが可能であった.しかし,散乱反射光成分も,空間的に一様に分布してはおらず,光の波長に依存しており,見る方向によって色彩が異なることが判明した. 従って,歯科用陶材の色彩の決定は,散乱反射光の測定のみでは不十分であり,散乱,表面両反射光の空間分布,分光分布について更に詳細な検討が必要である.
  • 小島 之夫, 高野 信, 福井 壽男, 水谷 紀輔, 長谷川 二郎
    1999 年18 巻3 号 p. 210-216
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    初期動揺度と歯根膜応力を計算するための簡単な方法(剛体モデル)を示した.この方法では,歯根膜を弾性体,歯と顎骨(歯槽骨)を剛体と仮定する.下顎第1小臼歯の動揺度を計算し,実測結果と比較した.また,剛体モデルの仮定を確かめるため,歯と顎骨(歯槽骨)の弾性変形を3次元有限要素法によって計算した. 歯根膜のヤング率とポアソン比がE_p=0.2MPa,ν_p=0.48の場合に,剛体モデルによって計算した動揺度が実測結果とほぼ一致する.この場合も含め,歯槽骨のヤング率E_bとE_pの比がE_b/E_p>10^5の範囲では,歯と歯槽骨がほとんど変形せず,歯根膜だけが変形する.この範囲では,剛体モデルの仮定が妥当であり,剛体モデルによって計算した歯根膜の応力分布が有限要素法の結果とほぼ一致する.
  • 門磨 義則
    1999 年18 巻3 号 p. 217-224
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    貴金属合金に対する接着性モノマーとして,4-ビニル安息香酸9,10-エピチオデシル(EP8VB)を新たに合成した.被着体合金として,金合金,金銀パラジウム合金,銀合金を用いた.EP8VBのエタノール溶液を鏡面研磨した合金の表面に塗布してから,1日放置した.表面処理剤の濃度が高い場合(1mol%)には,表面に存在する余剰のモノマーを除去するために洗浄してから,MMA-PMMA系レジンで2個の合金同士を突き合わせ接着させて,空気中で1時間硬化させた.硬化後2,000回の熱サイクルを負荷してから,引張接着強さを測定した. EP8VBを用いて表面処理を行うことにより接着強さは有意に向上した.0.01mol%の表面処理剤で処理しても1mol%の表面処理剤とほぼ同等の効果が得られた.BPO-アミン系の重合開始剤を用いた場合は,EP8VBとそのメタクリル酸エステル系の類似化合物のEP8MAの間に,接着強さの差異はほとんど認められなかったが,TBBOを用いた場合にはEP8VBの方がより効果的であることが明らかとなった.
  • 星野 高之, 倉持 健一, 日比野 靖, 中嶌 裕
    1999 年18 巻3 号 p. 225-232
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    本実験では硬化初期段階から24時間までのグラスアイオノマーセメントの機械的性質の経時的変化について検討を行った.実験には2種類の従来型グラスアイオノマーセメント(Fuji I,DNT Ionomer)と2種類のレジン添加型グラスアイオノマーセメント(Fuji LUTE,Fuji LUTEBC)を用いた.練和には各セメントごとにメーカー指定の標準粉液比を中心に,異なる3つの粉液比を設定した.[メーカー指定の標準粉液比を中心に,セメントの粉末を+20%(ただし,DNT Ionomerは+10%),-20%に設定した]セメントの圧縮強さは,内径4mm,高さ8mmの試料にて練和開始10分後から24時間後まで万能試験機にて測定した.また弾性率と靭性は圧縮強さ測定時に記録された荷重-クロスヘッド変位曲線より求めた.その結果,セメントの粉液比を増加させると各時間ごとの圧縮強さは増加した.とくにレジン添加型は練和開始30分後の値で練和開始24時間後の値のほぼ70%に達していた.一方,従来型セメントは24時間後の値の70%の強さを得るには,練和開始から1時間以上の時間を必要とした.弾性率と靭性は,練和開始から3時間値まで増加し,とくに練和開始から1時間値までの増加は著明であった.グラスアイオノマーセメントの機械的性質は硬化反応の進行に伴って著明な変化がおこることが示唆された.
  • 西山 典宏, 村松 安盛, 野村 充, 根本 君也
    1999 年18 巻3 号 p. 233-238
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究では,シクロヘキサン環を骨格としたtrans-1,2-ジメタクリロイロキシシクロヘキサン(DMC)を合成し,それらを用いたコンポジットタイプ硬質レジンを試作し,その硬化物の機械的性質を調べた.DMCの粘度はTEGDMAに近い値であり,そのポリマーの吸水率はUDMAより低く,TEGDMAの68%であった.光重合したUDMA-DMC硬化物の機械的性質はUDMATEGDMA硬化物に比べて全体的に低い値を示したが,このレジン硬化物を加熱処理すると,機械的強さは大きく向上し,弾性率およびヌープ硬さはUDMA-TEGDMA硬化物より高い値を示した.
  • 宮崎 晶子, 佐藤 治美, 清水 智幸, 小倉 英夫, 山内 雅司
    1999 年18 巻3 号 p. 239-247
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    摩擦仕事の観点から歯磨きの清掃効果を調べるために刷掃試験機を用いて上顎歯列模型の第一大臼歯頬側豊隆部と陥凹部表面における刷毛の接触・摩擦状態を観察し,歯面圧力を測定した.45゜の刷掃角度では,刷毛が豊隆部と陥凹部両者に接触し,摩擦が明瞭に観察された.90゜の刷掃角度では,陥凹部で接触・摩擦が不良となることが多く,豊隆部中央においても刷毛割れによる接触不良が起こった.歯面圧力は,刷掃力や刷掃振幅が増加すると,いくつかの刷掃条件で有意に増加した.90゜の刷掃角度における歯面圧力は,豊隆部ではほとんどの刷掃条件において45゜より有意に高かったが,陥凹部では刷掃振幅を10mmとした場合のみが有意に高かった.刷掃角度が90゜で刷掃力が400gfの場合,豊隆部では20mmの刷掃振幅の方が10mmより,また陥凹部では10mmの方が20mmより歯面圧力が有意に高くなった.
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