抄録
歯科用合金の応力-ひずみ線図を再評価するため, Type 1金合金, Type 4金合金, Ag-Pd-Au合金, Co-Cr合金で作製した鋳造試験片の引張試験を行い, アクチュエータの変位で測定したひずみと, ビデオ式非接触伸び計で測定した試験片のひずみとの関係を比較, 検討した.その結果, ビデオ式非接触型伸び計は伸びの計測に有効な手段であり, アクチュエータの変位より算出したひずみは, 応力-ひずみ線図上で降伏点までの曲線の形状に大きな問題があることが明らかとなった.特に, 引張試験開始時にグリップの初期すべりを生じるため, 弾性率は, ビデオ式非接触型伸び計による算出値が, アクチュエータの変位による算出値よりも有意に大きかった.グリップのすべりは試験中も起こり, 応力-ひずみ線図に影響し, 破断伸びの値にも影響する.これより, 歯科材料の応力-ひずみ線図を求める際には, 伸び計による計測が必須と考えられた.