金銀パラジウム合金を板状に成形しジルコニア球上で旋回させて動的抽出する方法を用いて, 試料の重さ, 旋回速度および抽出期間の諸条件を変えて抽出液と濾液を採取し, それらの中に存在する金属量を測定した.同時に, L-929細胞を用いてニュートラルレッド法とMTT法により細胞生存率への影響を検討した.その結果, 抽出液中では銅が最も多く検出され, 次いで銀, パラジウム, 金であった.銅は他の元素に比べて10倍以上の量が検出された.しかし, 濾液中では抽出液中と等しい量の銅のみが検出された.また, 試料の重さ, 旋回速度および抽出期間の増加とともに溶出金属量は増加した.一方, 細胞生存率に対する影響は, 軽い試料(1.5g)ではすべての抽出条件で対照群と等しいものであった.しかし, 重い試料(4.8g)では230および260rpmで14日間抽出群において細胞生存率は60〜70%に低下した.また, 濾液の細胞生存率は抽出液のそれより高くなる傾向を示した.以上から, 静置および動的の抽出条件間で金銀パラジウム合金の溶出挙動と細胞生存率への影響に明確な相違が認められた.臨床使用で動的負荷がかかる金属を
in vitroで評価する場合, 本実験で行った加速条件を加味した試験法を採用する必要性は高いことが明らかとなった.
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