歯科材料・器械
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19 巻, 2 号
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原著
  • 臼井 伸行, 廣瀬 英晴, 矢﨑 勇匡, 塩田 陽二, 由井 眞司, 許 學全, 西山 實
    2000 年19 巻2 号 p. 129-138
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    鋳造用リングライナーの緩衝能を表すパラメータとして, 埋没材の硬化膨張に対するワセリン含浸処理ライナーの緩衝効果について検討した.ライナーは, セラミックファイバー系15種(A群:ロックウール系, B群:セラミックファイバー低温系, C群:セラミックファイバー標準系, D群:セラミックファイバー低温〜標準系, E群:カオリン系)を用い, アスベストリボン3種を対照とした.硬化膨張測定器移動枠にワセリン含浸処理したライナーを装着して埋没材の硬化膨張率を測定し, ライナー装着なしでの硬化膨張率との差, すなわち, 緩衝量から緩衝効果を検討した.その結果, ワセリン含浸ライナーの緩衝効果は, 以下の3つの群に分類された.(1)ワセリン含浸によって緩衝量が増大した群(A群の2種, B群の1種, C群の2種, D群の1種, E群, AS群の1種), (2)ワセリン含浸によって緩衝量が減少した群(AS群の1種)および(3)ワセリン含浸によっても緩衝量がほとんど変化しない群(上記以外の9種)
  • 蟹江 隆人, 藤井 孝一, 有川 裕之, 今泉 章, 上野 修, 井上 勝一郎
    2000 年19 巻2 号 p. 139-144
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    本研究では, ウォータージェットを軟化象牙質の除去と歯牙に接着, 充填されたセメントおよびコンポジットレジンの削除に応用するための可能性について検討した.実験には, 試作した小型ウォータージェット切断加工機を利用し, 健全歯質および人工軟化象牙質と歯科用セメントおよびコンポジットレジンに高速水を噴射し, 高速水によってできた各材料表面のくぼみの直径と深さおよびそのときの試験片が受ける荷重を測定した.その結果, シリンダー圧300kgf / cm2では, すべての試験片に約45gfの荷重がかかることがわかった.また, ウォータージェットを使った技法が, 健全歯質を削除しない水圧(300kgf / cm2以下)を使うことにより, 健全歯質の削りすぎを行うことがなく, 選択的にう蝕部を削除し, また, 歯牙に付着したセメントやコンポジットレジンを除去する一方法となりうることが示された.
  • 曽我 祐一, 土居 寿, 望月 裕人, 小林 郁夫, 米山 隆之, 浜中 人士
    2000 年19 巻2 号 p. 145-153
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    歯科用合金の応力-ひずみ線図を再評価するため, Type 1金合金, Type 4金合金, Ag-Pd-Au合金, Co-Cr合金で作製した鋳造試験片の引張試験を行い, アクチュエータの変位で測定したひずみと, ビデオ式非接触伸び計で測定した試験片のひずみとの関係を比較, 検討した.その結果, ビデオ式非接触型伸び計は伸びの計測に有効な手段であり, アクチュエータの変位より算出したひずみは, 応力-ひずみ線図上で降伏点までの曲線の形状に大きな問題があることが明らかとなった.特に, 引張試験開始時にグリップの初期すべりを生じるため, 弾性率は, ビデオ式非接触型伸び計による算出値が, アクチュエータの変位による算出値よりも有意に大きかった.グリップのすべりは試験中も起こり, 応力-ひずみ線図に影響し, 破断伸びの値にも影響する.これより, 歯科材料の応力-ひずみ線図を求める際には, 伸び計による計測が必須と考えられた.
  • 後藤 隆泰, 足立 正徳, 亀水 秀男, 飯島 まゆみ, 西川 元典, 土井 豊, 森脇 豊
    2000 年19 巻2 号 p. 154-161
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    3種類の金属焼付用陶材(PFM)を用いて, 機械的性質に及ぼす低速亀裂成長(SCG)の影響を明らかにするために乾燥および腐蝕性環境下で破壊靭性値(K_IC)と四点曲げ強さの測定を行った.腐蝕性溶液(水0.9wt%食塩水, 50wt%酢酸水溶液)が存在するときのK_ICおよび蒸留水中の強さは乾燥条件下と比較すると顕著な低下を示した.このことはPFMのSCGは水によって促進され, 口腔条件下においても起こり得ると考えられた.更に, SCGが進行している時の荷重-変位曲線の測定, 研磨エッチング面および破断面の観察によってSCGとPFM組織との関係を検討した.その結果, 大きなリュウサイト結晶を持つPFMは結晶周囲に亀裂が生成しているため, 乾燥下でも強さが低下していたが, K_ICは他のPFMよりは大きかった.これは結晶周囲の亀裂がSCGに対して大きな抵抗として作用することを示している.
  • 高橋 志郎, 新家 光雄, 福井 壽男, 水本 登志雄, 長谷川 二郎
    2000 年19 巻2 号 p. 162-169
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    歯科用銀パラジウム銅合金について種々の熱処理を施し, β相を析出させることでミクロ組織を系統的に変化させたときの破壊靭性値を測定し, 破壊靭性値に及ぼす析出β相の影響について検討した.析出β相の体積率および直径は, 時効温度および時効時間の増加とともに増加する.亜時効状態では, 同一寸法の析出β相である場合体積率の増加とともに破壊靭性値は減少し, 同一体積率である場合析出相の直径の増加とともに増加する傾向を示す.
  • 飛梅 由紀子, 大坪 邦彦, 相馬 邦道, 米山 隆之, 浜中 人士
    2000 年19 巻2 号 p. 170-178
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    本研究は, 矯正用超弾性型Ti-Ni合金クローズドコイルスプリングが口腔内の温度変化に対して安定した矯正力を発現できるように改良することを目的とした.すなわち, 同コイルスプリングの温度変化に対する荷重変化を明らかにし, 二段階熱処理を施しその特性を検討したものである.その結果, 超弾性型Ti-Ni合金クローズドコイルスプリングの変位を一定に維持して温度変化を与えた際の荷重は, 変態(負荷), 逆変態(除荷)いずれの過程においても, 元の温度に戻すと初期荷重より上昇していた.また, 同コイルスプリングに二段階熱処理を施すと熱処理前と比較し, 荷重ヒステリシスは47〜60%に減少し, 温度変化を与えた際の荷重変化率も約12%に小さくすることが可能になった.従って, この二段階熱処理を施した超弾性型Ti-Ni合金クローズドコイルスプリングは, 口腔内の温度変化に対して安定した矯正力を発現する良好な超弾性特性を有し臨床応用に適したものであると推察された.
  • 赤木 誉, 武田 昭二, 中村 正明
    2000 年19 巻2 号 p. 179-186
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    金銀パラジウム合金を板状に成形しジルコニア球上で旋回させて動的抽出する方法を用いて, 試料の重さ, 旋回速度および抽出期間の諸条件を変えて抽出液と濾液を採取し, それらの中に存在する金属量を測定した.同時に, L-929細胞を用いてニュートラルレッド法とMTT法により細胞生存率への影響を検討した.その結果, 抽出液中では銅が最も多く検出され, 次いで銀, パラジウム, 金であった.銅は他の元素に比べて10倍以上の量が検出された.しかし, 濾液中では抽出液中と等しい量の銅のみが検出された.また, 試料の重さ, 旋回速度および抽出期間の増加とともに溶出金属量は増加した.一方, 細胞生存率に対する影響は, 軽い試料(1.5g)ではすべての抽出条件で対照群と等しいものであった.しかし, 重い試料(4.8g)では230および260rpmで14日間抽出群において細胞生存率は60〜70%に低下した.また, 濾液の細胞生存率は抽出液のそれより高くなる傾向を示した.以上から, 静置および動的の抽出条件間で金銀パラジウム合金の溶出挙動と細胞生存率への影響に明確な相違が認められた.臨床使用で動的負荷がかかる金属をin vitroで評価する場合, 本実験で行った加速条件を加味した試験法を採用する必要性は高いことが明らかとなった.
  • 中西 亮太, 長尾 恭宏, 小倉 英夫, 小菅 直樹, 亀田 晃
    2000 年19 巻2 号 p. 187-194
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2018/09/18
    ジャーナル フリー
    ステンレス鋼製とTi-Ni合金製矯正用オープンタイプコイルスプリングのクリープと圧縮力(圧縮に対する反発力)を調べ, 臨床使用時の圧縮程度と交換時期について検討を行った.コイルスプリングには臨床使用に近似した荷重時間(7, 30, 90日間)で圧縮率20または40%の圧縮変形を与え, その後クリープと圧縮力を測定した.NI-Ti合金製は圧縮率, 荷重時間にかかわらずクリープがほとんど発生しないのに対し, ステンレス鋼製は荷重時間が長くなると, クリープが増加し, 90日間保持すると20%圧縮率で約4.2%, 40%圧縮率で約7.6%のクリープが生じた。原長に対して20または, 40%圧縮した場合, Ni-Ti合金製は荷重時間にかかわらず圧縮力が変化しないのに対し, ステンレス鋼製は90日間になると圧縮力は有意に減少した.この結果からステンレス鋼製は1ヵ月後の交換が必要であり, Ni-Ti合金製では, その必要がないことが示唆された.
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