抄録
平均粒径20μm未満のSUS446球状ステンレス鋼をフィラーとした磁石に吸引する新しいコンポジットレジンを作製した.シラン処理剤(γMPTS)の濃度を変化させてフィラーを処理し, その処理効果を曲げ試験によって評価した.その結果, シラン処理剤の最適量はフィラー100g当たり, 1.2〜2gであると考えられた.しかし, その曲げ強さは, 70MPaを下回り, また1%乳酸溶液7日間浸漬すると, コンポジットレジンからの総溶出金属量は20μg/cm2を超えていた.一方, フィラーをあらかじめ塩酸溶液で処理してからシラン処理すると, その曲げ強さは70MPaを超え, また溶出金属量も1μg/cm2未満と著しく減少した.シラン処理前に塩酸処理することは重要であることが示唆された.このコンポジットと磁石の吸引力試験では, 市販のキーパーに比較して約40%の吸引力を示した.