抄録
Ca(OH)2は根管充填材, 裏装材, 歯髄覆とう材として広く用いられており, その病理組織学的性質については良く研究されている.しかし, 操作性に大きな影響を与える物理的性質についての報告は少ない.そこで, Ca(OH)2-H2O系の流動特性の基礎データの蓄積のために, ずり速度-ずり応力の関係を求めた.Ca(OH)2とH2Oは以下の条件で練和した:0.80g/ml, 0.75g/ml, 0.70g/ml, 0.65g/ml:そして, この練和物を温度20℃, 30℃, 37℃にて測定した.Ca(OH)2-H2O系に一定のずり速度を与えると, ずり応力は時間経過とともに低下することが判かった.ずり速度を5rpm, 10rpm, 20rpm, 50rpm, 100rpmと変化させ, 各々についてずり応力を測定し, その結果を基にして, 梅屋等の方法により, ヒステリシスループを作製したところ, この系はチクソトロピーであることが判かった.チクソトロピーはCa(OH)2の量が増すほど大きくなり, 温度が高くなるほど小さくなる.チクソトロピーは主にCa(OH)2の量によって左右され, 温度変化によってわずかに影響される.