抄録
有限要素法とはり理論とを用い, 下顎左の犬歯, 第1, 第2の小臼歯を固定源として, 第2大臼歯を遠心傾斜させる場合を力学的に検討した.ヘリカルループのあるスプリングに発現する矯正力は, 微小変位はり理論によって計算できる.第2大臼歯には, 垂直方向の力と遠心方向のモーメントが加わる.両方の荷重とも, 歯を遠心傾斜させる作用がある.ただし, 垂直力は, 歯を舌側方向にも傾斜させる.リテーナーの主な力学的効果は, 左の犬歯と第1小臼歯の固定である.この効果によって, 固定源の歯に加わる荷重が均等になる.リテーナーがない場合でも, 固定ワイヤの曲げ剛性(ヤング率, 断面2次モーメント)を大きくすれば, 固定源の歯に加わる荷重が均等にできる.同じ効果は, ブラケット幅を大きくすることでも得られる.歯に加わる荷重は, はり理論によって簡単に計算できる.