2003 年 22 巻 6 号 p. 459-468
種々の熱処理を施した12mass%金含有歯科用金銀パラジウム合金につき,種々の腐食環境中で摩擦摩耗試験を行い,摩耗により減少する重量に及ぼすミクロ組織および腐食環境の影響について検討した.いずれの腐食環境中においても金属間化合物であるβ相をより多く析出する溶体化処理後に時効処理(溶体化時効処理)を施した本合金の試験片の摩耗により減少した重量は他の熱処理(溶体化処理)材と大きく変わらないが,相手材(受け入れまま状態の本合金)の摩耗により減少した重量は溶体化時効処理材が他の熱処理材の場合に比べて小さくなる.本合金の摩耗形態は,凝着摩耗であり試験片および相手材の摩耗により減少した重量の合計は,接触面の表面粗さに相関する傾向を示す.また,接触面近傍の硬さがこの表面粗さを変化させる原因と推察される.