抄録
CPSAガラス繊維とBis-GMAレジンから繊維強化プラステック型(FRP)審美矯正ワイヤーを調製し,口腔内使用の前段階として,湿潤条件下での吸水動態と機械的特性の経時的変化を調べた.吸水は約3〜6時間で完了し,機械的特性は劣化した.AE測定により応力緩和試験中の荷重低下と試料内部の微視的破壊を関連づけて観測できた.湿潤条件では乾燥条件の5〜9倍のARが発生したが,カップリング処理により荷重の低下速度が軽減され,AEの発生時期を延ばすことができた.定たわみ曲げ負荷後の3点曲げ試験から得られた縦弾性係数,2mmたわみ時の荷重値は水中浸漬24時間後でほぼ半減し,永久変形量が増大した.これらの変化は2mm変形させるのに要したエネルギーにより単一の指標として評価できた.ガラス繊維に対するカップリング処理はマトリックスレジンとの界面剥離を抑制し,機械的特性の劣化の軽減に寄与した.