歯科材料・器械
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原著
α-リン酸三カルシウム-ポリカルボン酸系硬化体の性質に及ぼす添加物の影響
山口 和夫中嶌 裕
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1988 年 7 巻 1 号 p. 33-43

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抄録

α-TCP粉末をポリカルボン酸水溶液と練和するとα-TCP-ポリカルボン酸系硬化体を形成し硬化する. 本研究はα-TCPを含む新しいリン酸カルシウム系材料に関する基礎的研究としてα-TCP-ポリカルボン酸系硬化体の性質に及ぼす添加物の影響について実験と検討を行った. 本研究では, 添加物として, ZnO, MgO, ZrO2, TiO2, α-Al2O3を使用した. 練和液として松風製HY-BONDポリカルボキシレートセメントの練和液を使用し, 粉液比は1.2/1.0(g/g)とした. 添加物を含有するα-TCP粉末をポリカルボン酸水溶液と練和後, ADAS No.61に準じた方法で, 硬化時間, 圧縮強度, 溶解量を測定した. 又, 硬化体のX線粉末回折, SEM観察を行った. その結果, 以下のような知見が得られた. (1)酸化物を添加した場合, 硬化時間は延長する傾向にあり, 特にZnOの場合は著明であった. (2)少量の添加物の存在は, 圧縮強度をわずかに増加させる傾向にあったが, 本実験で使用した酸化物では強度を著明に増加させることはできなかった. (3)ZrO2, TiO2の添加により溶解量は減少し, ZnO, MgOの添加では溶解量は増加した. (4)XRDより硬化体は非晶質様なパターンを示し, その中に未反応α-TCPと添加物が存在していた. (5)SEM観察より硬化体は主にマトリックス部分と未反応粒子からなっていた. 以上の結果より, ポリカルボン酸とすみやかに反応する添加物の存在は, 硬化体の硬化反応と物性に著明な影響を与えるものと推察された.

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© 1988 一般社団法人 日本歯科理工学会
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