歯科材料・器械
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原著
リン酸アルミニウムを利用した新しい歯科用埋没材の研究 第3報 鋳造体の適合性と埋没材の諸性質
亀水 秀男行徳 智義竹沢 保政柴田 俊一飯島 まゆみ若松 宣一後藤 隆泰土井 豊森脇 豊生内 良男久保 文信
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1988 年 7 巻 2 号 p. 302-310

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抄録

リン酸アルミニウム(AlPO4)を耐火材とした埋没材は7%以上もの加熱膨張を示すことがわかっており, これを実用化するには膨張量をコントロールする必要がある.また, これによって加熱膨張のみで鋳造収縮を補償できると考えられる.そこで, 加熱膨張量をコントロールした埋没材を試作し, それについて, 鋳造体の適合性, ならびに硬化膨張と鋳造体の変形との相関について検討した.また, 試作埋没材の物理的な諸性質についても検討した.5〜30wt%のリン酸アルミニウムに対し, それぞれ石英およびクリストバライトを混合して耐火材の配合量を一定として, 結合材にリン酸塩を用いた.加熱膨張量は, リン酸アルミニウムの配合量が増加すれば, 比例的に増加した.硬化膨張は, ほとんど発現しないものとリン酸アルミニウムの配合量によって種々の膨張率を示すものがみられた.硬化膨張がほとんどなく加熱膨張量のみで膨張量を調整した埋没材を用いた場合, 各種歯科鋳造用合金の鋳造体の適合性は良好な結果を示した.種々な硬化膨張率を示す埋没材を用いて硬化膨張の鋳造体に対する影響を検討した結果, 硬化膨張が多いものほどスプルーイングの方向による浮き上がり量の差が大きく, これによって鋳造体の変形と硬化膨張との間には非常に大きな相関(相関係数=0.86)があることがわかった.リン酸アルミニウム埋没材は市販のリン酸塩系埋没材に比べて混液比が高いにもかかわらず硬化時間(17〜26min)や圧縮強度は同程度であったが, 硬化熱(29℃〜30℃)については優れていることがわかった.

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© 1988 一般社団法人 日本歯科理工学会
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