歯科材料・器械
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7 巻, 2 号
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原著
  • 川口 稔
    1988 年7 巻2 号 p. 143-158
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    分子骨格の異なる9種のUDMAを合成し, 化学構造と重合体と物性との相関について検討した.これらのUDMAは分子骨格として, 剛直なフェニル環(XY-HEMA, XY-HPMAおよびXY-HPPM), シクロヘキサン環(IP-HEMA, IP-HPMAおよびIP-HPPM)あるいは屈曲性のヘキサメチレン鎖(HM-HEMA, HM-HPMAおよびHM-HPPM)を有しており, 結晶性モノマーであるXY-HEMAおよびHM-HEMAを除いて, すべて常温で液状のモノマーであった.耐水性の向上を意図して側鎖にフェニル基を付加したUDMAはtriEDMAとの共重合系において, 30〜70mol%の濃度範囲で曲げ強さ, 弾性係数, 圧縮強さ, ダイアメトラル引っ張り強さに最大値を示し, 吸水による物性の低下も小さく, 総体的にBis-GMAを上まわる物性を有していた.さらに, UDMA/triEDMA共重合体の吸水量はUDMA分子構造中への疎水性原子団の導入により大きく低下し, 疎水性原子団による耐水性の向上が実証された.
  • 川原 光正, 清水 博史, 吉田 圭一, 熱田 充
    1988 年7 巻2 号 p. 159-166
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    接着性オペークレジンの12%Au含有金銀パラジウム合金と, Co-Cr合金とで作ったメタルフレームへの接着強さと辺縁封鎖性を測定した。オペーク塗布に先立ってメタルフレームを適切に表面処理することによって, オペークレジンは強い接着強さを示した.しかしながら, 熱サイクルを2万回加えることによって, 接着強さは著しく減少し, オペークとメタルフレームとの間隙に色素の広範囲な侵入が生じた.機械的な維持をこのオペークと併用することによって, オペークの維持力は著しく増し, 熱サイクルを加えても安定していた.もっと強く, かつ安定した接着強さをオペークが有するまで, たとえ接着性オペークレジンとはいえ, マイクロリテンションビーズのような機械的維持部の併用が不可欠である.
  • 福田 秀昭, 宮入 裕夫
    1988 年7 巻2 号 p. 167-175
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    上顎レジン全部床義歯の強度, 剛性の向上と, 装着時の違和感の軽減を計るため義歯床の強化と薄床化について検討した.強化義歯床は, カーボン繊維, アラミド繊維を強化材に義歯床アクリル樹脂をマトリックスとした薄床化義歯を作製した.そして, 静的4点曲げ試験を行い, その特性について基礎的な検討を行った.その結果, CF, AFクロス強化義歯床の床口蓋部の厚さは通常のレジン床義歯に比べCFクロス強化義歯床で約50%, AFクロス強化義歯床で約40%の薄床化となる.また, CF, AFクロス強化義歯床の曲げ強度は通常のレジン床義歯と同程度の強度が得られた.
  • 土井 豊, 柴田 俊一, 竹沢 保政, 若松 宣一, 亀水 秀男, 飯島 まゆみ, 森脇 豊, 宇野 克美, 久保 文信, 生内 良男
    1988 年7 巻2 号 p. 176-183
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    自己硬化型アパタイトセメントの硬化機構を熱力学的解析, X線解析, 透過電顕により解明した.セメント泥中の全カルシウムおよびリン酸濃度に基づく熱力学的解析から, セメント泥の溶液組成は最初の10分程度はセメント材料の一つである第二リン酸カルシウム二水塩(DCPD)と平衡状態を保つが, それ以後溶液組成はDCPDに対し不飽和となりアパタイト組成に近づいていくことが明らかとなった.反応途中のセメント泥から採取した固相をX線回折すると, 前駆物質を経ることなくアパタイトが生成していることが確かめられた.透過電顕による観察では, 新たに析出したアパタイトは硬化促進材として添加したアパタイト結晶の基底面から優先的に析出していることが示され, 新たに析出した針状を呈した結晶は互いにいり組み, からみ合っていることが認められた.以上のことより, 自己硬化型アパタイトセメントは, DCPDとTe-CPから生成したアパタイトが互いにいり組み, からみ合うことにより硬化することが示唆された.
  • 遠藤 一彦, 荒木 吉馬, 大野 弘機, 松田 浩一
    1988 年7 巻2 号 p. 184-191
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    口腔内で変色した6個のAg-In合金鋳造冠を撤去し, 変色表面をESCAで分析した.合金表面に形成された腐食生成物層の厚さは約1, 500〜12, 000Åであり, 層が厚くなるほど合金は光沢を失い, 表面が黒くなった.腐食生成物層は, 主にInとZnの酸化物から構成され, 合金成分の硫化物や塩化物は存在していなかった.Agは金属状態で腐食生成物層中に存在していた.Znの酸化物はZnOと同定された.Inの酸化物は, 最も安定なIn酸化物であるIn2O3ではないことが確認された.Ag-In合金の口腔内における変色は, 一般に言われているように, Ag2Sの生成ではない.変色は, InおよびZnが選択的に腐食され, それらの酸化物層を合金表面に形成するために起こる.
  • 遠藤 一彦, 荒木 吉馬, 大野 弘機, 松田 浩一
    1988 年7 巻2 号 p. 192-196
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    口腔内で変色したAg-Sn-Zn合金鋳造冠を撤去し, 変色表面をESCAで分析した.合金表面に形成された腐食生成物層の厚さは, 5, 000Åであった.腐食生成物層は, 主に卑金属成分の酸化物SnO2とZnOで構成され, Agは金属状態で存在していた.合金成分の硫化物および塩化物は検出されなかった.Ag-Sn-Zn合金の口腔内における変色の原因は, Ag2Sの生成ではなく, 卑金属成分SnおよびZnの酸化物生成である.
  • 平林 茂, 平澤 忠
    1988 年7 巻2 号 p. 197-204
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    可視光線重合コンポジットレジンの光透過性を改善するためには, モノマーの屈折率がフィラーの屈折率により近いことが望まれる.そこで, 本研究は, フィラーとして汎用されているシリカの屈折率により近い低屈折率を有し, かつ既存の芳香族ジメタクリレートに匹敵する物性を有するポリマーを与える歯科用モノマーの開発を目的として行ったものである.目的とするモノマーとして, 4種の脂環骨格を有するジメタクリレート, すなわち, 1, 4-シクロヘキサンジオールジメタクリレート, 1, 4-ジメタクリロキシメチレンシクロヘキサン, 2, 2-ビス(4-メタクリロキシシクロヘキシル)プロパンおよび4, 8-ジメタクリロキシメチレントリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカンと, 2種のフッ素置換芳香族ジメタクリレート, すなわち, 2, 2-ビス(4-メタクリロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンおよび2, 2-ビス(4-メタクリロキシエトキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを合成した.これらモノマーの屈折率の測定から, ジメタクリレートの芳香族環状骨格の代わりに脂環骨格を導入すること, およびフッ素置換は, モノマーの屈折率の低下に有効であることが認められた.これらモノマーの塊状重合体の物性測定の結果, 新たに合成したジメタクリレート類は, 歯科用光重合コンポジットレジンのマトリックスモノマーとして有用であると認められた.
  • 河野 陽一
    1988 年7 巻2 号 p. 205-218
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    本実験では, 牛下顎骨を試片として1kgf Vickers硬さ試験における荷重保持時間の影響を検討した上で, 牛下顎骨および牛歯象牙質から立方体試片を切りだし, 近遠心, 上下, 頬舌の3方向から硬さと圧縮挙動ならびにこれらの相関関係を調べ, 以下の結果を得た.骨の硬さ値は, 荷重保持時間の影響を受けた.1辺1.8mmの同一の牛下顎骨立方体試片を, 順次, 3方向から比例限直後まで圧縮試験し, 3方向の比例限, 弾性係数を求め, 比較することが可能であった.近遠心方向では, 硬さと弾性係数との間に強い相関関係が認められた.骨の硬さおよび圧縮特性の異方性が量的に確かめられた.
  • 鳥山 史人
    1988 年7 巻2 号 p. 219-226
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    本研究は, 可視光線重合型義歯床用レジンの試作に関するもので, その要旨は, 義歯作製工程の簡略化と物性および模型との適合性の向上を目的とし, 組成と物性について検討したものである.とくに, モノマーは, 疎水性基および重合性基を有するシクロホスファゼンモノマーを用いて, レジンマトリックスを強化し, 機械的性質を向上させるとともに, 吸水量を低下させることを目的としたものである.実験材料のシクロホスファゼンモノマーは, P4N4(CF3CH2O)2[CH2=C(CH3)COO(CH2)2O]6 以下 [4PN-(TF)2-(EMA)6 と略記〕 と, 2, 2-ビス〔4-(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン(以下BPE200と略記)を選定し, 4PN-(TF)2-(EMA)6 モノマーの配合量は, 10〜35wt%とし, BPE200モノマーは, 0〜25%とし, 6種の組成物を作製した.試作可視光線重合型義歯床用レジン6種の内, 機械的性質が良好で, 吸水量が比較的少ない組成は, PMMAおよび粘度調整剤としてのシリカがそれぞれ55および10%とし, これに4PN-(TF)2-(EMA)6 モノマー20およびBPE200モノマーを15%配合した場合であることを明らかにしている.上記組成物の曲げ強さは, 820kg/cm2を示し, 弾性率は3.2×104kg/cm2で, たわみは, 15→35および15→50Nで, それぞれ0.9および1.6mmを示した.また, 硬さはHRS68を示し, 吸水量および溶解量は, それぞれ24.8および1.1μg/mm3を示した. 接触角は71°を示した.
  • 西村 文夫, 佐々木 岳彦, 斉藤 仁, 野本 直
    1988 年7 巻2 号 p. 227-233
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    ヒトの象牙質に圧縮応力を耐えたときの応力緩和特性について検討した.健全な抜去歯から象牙細管の方向を考慮しながら, 純銅製中空ドリルとアルミナペーストを併用し, 直径1mm, 高さ2mmの円柱状試片を作製した.試験速度毎分250%の高速で初期荷重を与えて, 0〜50℃の水中の応力緩和を測定し, 環境温度の影響, 象牙細管の方向の影響, さらに年齢との関係や薬液処理の影響についても検討した.ヒト象牙質の応力緩和は温度依存性を示した.また, 象牙細管の方向による差は認められなかったが, 年齢による差は認められた.象牙質の60分後の平均応力緩和率は約10%〜20%の値を示した.この値は, エナメル質の2倍〜4倍に, またコンポジットレジンの0.2〜0.3倍に相当した.また, 象牙質の30%りん酸エッチングは応力緩和を約2倍に増大させた.
  • 原嶋 郁郎
    1988 年7 巻2 号 p. 234-251
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    メタクリロイルオキシ安息香酸(MBA)の異性体3種を合成し, MBAを含む常温重合レジンの歯質に対する接着強さを測定した.あわせて, MMA溶液中からの歯質粉末に対する吸着測定, および走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い, MBAの歯質接着性について考察した.o-およびm-異性体である2-MBAおよび3-MBAでは, TBB-Oを重合開始剤とするMMAレジンに3〜5wt%添加した場合に10%クエン酸-3%FeCl3処理歯質に対して14〜15MPaの最も大きな接着強さを示した.p-異性体である4-MBAは室温においてMMAに対する溶解性が低いものの, 1wt%の添加で12.5〜14.5MPaの接着強さを示した.MBAの接着効果は, 過酸化ベンゾイル-芳香族第3アミン系, あるいはこれに芳香族スルフィン酸を加えた重合開始剤系を使用した場合も, また無処理歯質に対しても認められた.いずれのMBAもレジンの歯質接着性を向上させるが, 他の歯科用モノマーに対する溶解性, あるいは長期水中浸漬および熱サイクル試験による接着耐久性などから, 3種のMBA異性体の中では3-MBAが実用的に最も好ましいモノマーであると思われる.処理象牙質に対する接着において, 樹脂含浸象牙質層の形成と接着性が密接に関係していることがSEM観察から示唆された.MBAが接着剤レジンモノマーの脱灰象牙質層への含浸を促進していることも確認された.MBAのMMA溶液中からの歯質に対する吸着においては, MBAが優先的に歯質に吸着することが示された.MBAはカルボキシル基で歯質に吸着し, フェニル基を歯質から遠ざけるように配向すると推定された.さらに, 吸着等温線から吸着したMBA層にはMMAの競争吸着が起こっていることが示唆された.以上の結果から, MBAの歯質への吸着が行われることでレジンが歯質面により完全な形で密着すること, あるいは処理象牙質に対しては脱灰象牙質層へのモノマー浸透を助長することによって, MBAの接着促進効果が発現するものと思われる.
  • 高橋 純造, 岡崎 正之, 木村 博
    1988 年7 巻2 号 p. 252-257
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    種々の濃度の電解カルシアを含む酸化カルシウム添加リン酸塩系埋没材を作製した.硬化膨張率, 加熱膨張率, X線回折, 示差熱分析, 熱重量変化を測定した.酸化カルシウム3%添加により硬化膨張率および加熱膨張率の増加が認められた.これは酸化カルシウムの水酸化カルシウムへの変化によることを示唆している.しかし, 粉末の保存期間とともに, この効果は減少した.
  • 木村 博, 寺岡 文雄, 游 本淵
    1988 年7 巻2 号 p. 258-261
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    光重合型のプリプレグを用いてFRP製の硬質レジン前装冠用フレームを試作し, 臨床への応用の可能性について検討した.FRPフレームと光重合型硬質レジンとの剪断接着強度は約100kgf/cm2であった.FRPフレームはリン酸亜鉛系, カルボキシレート系およびグラスアイオノマー系セメントとはほとんど接着しなかった.しかし, レジン系セメントとは良く接着し, 特に, スーパーボンドC&Bとの接着強度は240kgf/cm2であった.FRPフレームと支台歯模型との適合性は優れ, マージン部の浮きもほとんど見られなかった.FRPフレームは操作性や修理および調整が簡単で, メタルフレームよりも作業性に優れていた.FRPフレームは着色が容易で, 硬質レジンとの接着性も優れているため, オペーク色レジンやリテンションビーズは不用であった.これらのことから, FRPフレームは硬質レジン前装冠用フレームとして臨床への応用が可能であることがわかった.
  • 米山 隆之
    1988 年7 巻2 号 p. 262-269
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    NiTi合金は, 形状記憶効果や超弾性といった特性だけでなく, 高い減衰能をも有する.今回の研究では, NiTi合金の振動減衰能と衝撃吸収性について検討した結果, 純チタン, 白金加金, Co-Cr合金に比較して良好な振動減衰能を示し, 衝撃吸収の面でも非常に効果的であった.また, これらの性質は, 400℃, 30分間の中温処理によってさらに強化された.NiTi合金は, 医科や歯科で用いられる人工材料の生体組織に対する外力を緩和するのに有効であると考えられる.
  • 坂井 秀行, 松田 浩一, 下河辺 宏功
    1988 年7 巻2 号 p. 270-278
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    歯科用銀合金の腐食速度評価法を確立する目的で矩形波電流分極抵抗法とクーロスタット法の二法を用いてAg-Pd二元合金の分極抵抗の測定を行った.試験溶液として0.9%NaCl水溶液と0.1%HCl水溶液(pH2)を用いた.合金のPdが増加するに従い時定数が大きくなる.そのため矩形波電流分極抵抗法用いた場合0.9%NaCl水溶液では周波数が0.001Hzでも分極抵抗は測定できず, 酸性溶液においてはPdを33%以下含む合金にだけ適用して分極抵抗を求めることができた.クーロスタット法はすべての合金に適用して分極抵抗を求めることができ, 分極抵抗導出に要する時間は1〜50秒であった.分極抵抗を腐食速度に換算する変換係数が同種合金, 同一腐食環境では一定になると仮定した場合, クーロスタット法で求めた分極抵抗から腐食速度を推定し合金の耐食性を比較することができる.よってクーロスタット法が銀合金の迅速な腐食速度評価法として応用できる可能性が示唆された.
  • 楪 雅行, 佐藤 義輝, 原 健二, 内田 康也, 田島 清司, 小園 凱夫, 林 一郎
    1988 年7 巻2 号 p. 279-289
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    金銀パラジウム合金の溶湯外観から鋳込みに適当であると判断した時の溶湯温度を実測した前報にもとづいて, クラウン鋳造体の表面性状ならびに鋳巣に及ぼす鋳込み温度の影響を調べた.クラウンは鋳造熟練者の鋳込み温度に近似した1, 000℃と鋳造未熟練者の最高鋳込み温度に近似した1, 200℃で遠心鋳造した.クラウン表面には銅および亜鉛の酸化による黒変が認められ, その黒変の程度は鋳込み温度の差ならびにフラックス添加の影響を受けなかった.ボタン部表面にはクラウン表面と同様の黒変が1, 000℃で鋳込んだ場合に認められたが, フラックスを添加することによって黒変の程度は減少した.1, 200℃で鋳込んだ場合, ボタン底部表面には埋没材の焼きつきが, ボタン上部表面には著しい酸化による黒変が, クラウン咬合面表層近くに多量の鋳巣が認められた.また, フラックスの添加によって, 鋳巣の発生量は減少したが, 1, 200℃では合金の酸化を防止する効果は認められなかった.
  • 亘理 文夫, 西村 文夫, 野本 直
    1988 年7 巻2 号 p. 290-301
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    耐熱材+結合材が単一成分となるような純粋酸化物埋没材を採用または開発して作製されたシリカ, アルミナ, マグネシア, カルシア, ジルコニアの各鋳型に純チタンをアルゴンアーク融解, 鋳造し, 得られた鋳造体におけるチタン-耐熱材反応界面近傍を肉眼, 光学ならびにSEMによる観察, ESCAを用いての元素分析, 薄膜X線回折装置による, ごく表層の生成物の同定をおこない, 各種耐熱材のチタンに対する焼付反応性を比較した.鋳造体表面における焼付の程度は, 焼付が小さく, 耐熱材として良好なものから順にジルコニア, カルシア, マグネシア>アルミナ>シリカであった.焼付程度, 厚さ, 成分等を検討し, 焼付反応性に及ぼす要因について考察した.
  • 亀水 秀男, 行徳 智義, 竹沢 保政, 柴田 俊一, 飯島 まゆみ, 若松 宣一, 後藤 隆泰, 土井 豊, 森脇 豊, 生内 良男, 久 ...
    1988 年7 巻2 号 p. 302-310
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    リン酸アルミニウム(AlPO4)を耐火材とした埋没材は7%以上もの加熱膨張を示すことがわかっており, これを実用化するには膨張量をコントロールする必要がある.また, これによって加熱膨張のみで鋳造収縮を補償できると考えられる.そこで, 加熱膨張量をコントロールした埋没材を試作し, それについて, 鋳造体の適合性, ならびに硬化膨張と鋳造体の変形との相関について検討した.また, 試作埋没材の物理的な諸性質についても検討した.5〜30wt%のリン酸アルミニウムに対し, それぞれ石英およびクリストバライトを混合して耐火材の配合量を一定として, 結合材にリン酸塩を用いた.加熱膨張量は, リン酸アルミニウムの配合量が増加すれば, 比例的に増加した.硬化膨張は, ほとんど発現しないものとリン酸アルミニウムの配合量によって種々の膨張率を示すものがみられた.硬化膨張がほとんどなく加熱膨張量のみで膨張量を調整した埋没材を用いた場合, 各種歯科鋳造用合金の鋳造体の適合性は良好な結果を示した.種々な硬化膨張率を示す埋没材を用いて硬化膨張の鋳造体に対する影響を検討した結果, 硬化膨張が多いものほどスプルーイングの方向による浮き上がり量の差が大きく, これによって鋳造体の変形と硬化膨張との間には非常に大きな相関(相関係数=0.86)があることがわかった.リン酸アルミニウム埋没材は市販のリン酸塩系埋没材に比べて混液比が高いにもかかわらず硬化時間(17〜26min)や圧縮強度は同程度であったが, 硬化熱(29℃〜30℃)については優れていることがわかった.
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