歯科材料・器械
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線引加工したAg-Pd-Cu合金の機械的性質
長谷川 務宮川 行男中村 健吾
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1989 年 8 巻 1 号 p. 60-76

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抄録

パラジウムを20〜30wt%, 銅を10〜20wt%含む9種の試作3元合金を用い, 新たに考案した無酸化吸引加圧鋳造法により直径4.5mmの棒状体を作製した.この棒状鋳造体に線引加工を加え, 直径2.0mmの試料とした.軟化および硬化熱処理後に機械的諸性質(弾性係数, 弾性限, 耐力, 引張り強さ, 伸び, およびビッカース硬さ)を測定し, 内部鋳造欠陥がほとんど存在しない条件下での合金組成の影響および機械的諸性質間の15通りの相関について明らかにしようと試みた.軟化熱処理したとき, 銅とパラジウムの含有量が増すほど硬さと強さは大きくなった.一方, 硬化熱処理したときには, 硬さと強さはおおよそパラジウム含有量の増加に伴い大きくなった.軟化および硬化熱処理後の引張強さは, それぞれ44.4〜60.7および68.1〜89.1kgf/mm2の範囲にあった.伸びは硬化熱処理後においても10%以上あった.15個の相関係数(r)のうち14個は統計学的に有意(p<0.01)であった.求められた回帰直線のうち1つは次の通りであった.引張強さ(kgf/mm2)=9.1+0.305Hv(r=0.990)また, 本研究で求められた機械的諸性質を同一組成の普通に鋳造した試料のそれらと比較検討した.

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© 1989 一般社団法人 日本歯科理工学会
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