抄録
Ti-6Al-4V合金を超塑性成形することにより製作した義歯床の機械的性質を明らかにするため, 種々の曲げ試験を行った.最初にTi-6Al-4V合金超塑性成形体とCo-Cr合金や金合金の鋳造体との曲げ特性の比較を行った.次に顎堤モデルを用いて表面形態や口蓋の深さの違いがTi-6Al-4V合金超塑性成形体の曲げ特性に及ぼす影響を検討した.Ti-6Al-4V合金超塑性成形体は, 厚さがほぼ同じなら鋳造したCo-Cr合金と同程度の曲げ強さを示した.また幅方向に湾曲を付与し樋状にすると曲げ強さは増し, 長さ方向にアーチ状に湾曲を付与した場合は減少した.後者の場合, 超塑性成形では板厚が薄くなるために曲げ強さが減少するものと考えられ, 実際の臨床例においては口蓋のかなり深い場合がこれに該当する.臨床模型によるTi-6Al-4V合金床でも同じ傾向を示した.そこで口蓋が深くても, Co-Cr合金鋳造体と同程度のたわみにくさを得るために必要な成形前のTi-6Al-4V合金板の厚さを明らかにした.