抄録
EDTA3-2(NH4/Fe)溶液処理した象牙質に2% 4-META/MMA-TBBレジンを接着し, 試料を1年間水中に浸漬しておいても, 接着強さは有意に低下しないことが明らかとなった.TEM観察により硬化レジンと象牙質の間に0.5〜1.0μmの樹脂含浸象牙質が認められた.試料を電子染色したり, HClで脱灰した結果, 樹脂含浸層の底部にコラーゲンの周囲にあるハイドロキシアパタイトがレジンでカプセル化されていることが確認された.1年間水中に浸漬した試料の引張破断面はレジンの凝集破壊を示し, 10-3溶液の時のように樹脂含浸象牙質底部での破壊像は見られなかった.EDTA 3-2(NH4/Fe)溶液は1μm以下の薄い脱灰層を作るため, 底部にはハイドロキシアパタイトが残存している.レジンがこの薄い脱灰層を完全に覆うために良好な接着耐久性が得られたものと考えられる.