抄録
本研究の目的は, 幼児がどのように会話相手の発話に自己の発話を関連させ, 会話を維持しているのかを検討することであった。このため3, 4歳児50名のペア遊び場面での発話を収集した。まず子どもたちの8分間のペア遊びでの発話を書き起こし, すべての発話を8つのカテゴリー, つまり4つの発話機能 (申し出・要求・陳述・質問) とこれらに対する4種類の返答に分類した。また, すべての発話についてもう一度, 関連した, あるいは非関連の反応が後続していたのか否かについても判定した。この結果, 陳述に対する関違反応の数は発達的に増加し, 非関連反応を上回るようになることが見出された。また陳述への返答に対しても, 関違反応が後続するケースが発達的に増加していた。陳述で始まる2ターンの発話連鎖に限定して分析を行った結果, 「陳述一返答一返答」という連鎖のみが発達的に増加していた。また, 最初の陳述に対して新情報を付加して返答する場合に, この連鎖が出現することが多かった。これらの結果から, 単に返答するだけではなく, 新情報を提供して相手の反応を引き出すような発話の増加によって, 幼児がより長い発話連鎖を維持する能力が獲得されるのではないかと考察された。