抄録
3名の発達障害児を対象として, セルフ・マネージメント・スキルの成立, 維持, 般化のための条件を検討した。研究1では, セルフ・マネージメント・スキルを, 以下の4個の行動要素に課題分析した。(1) 課題を選択しそれを言語化する「自己教示」, (2) 選択した課題を行う「課題遂行」, (3) 次に行う課題を選択する「次課題選択」, (4) 課題の完了を聞き手に報告する「完了報告」。総課題提示法, 時間遅延法によってそれぞれの行動構成要素を形成した。その結果, 第3者からの指示を最小限にした状況で複数の課題をひとりで遂行する行動が獲得され, 課題間, 課題量, 場面間, 聞き手間, 家庭場面において般化したことが示された。研究2では, 参加児がひとりで解決不可能な課題を設定し, 辞書を調べて正答を記入する「辞書使用行動」の形成を行った。プロンプト・フェイディング法, 時間遅延法を適用し指導を行った結果, すべての参加児において, 高い割合で辞書使用行動が生起した。また, 辞書を参加児から離れた位置に設置することで, かつて辞書を見て答えていた問題についても辞害なしで正答する「自己学習行動」が獲得され, 家庭場面においても定着を示した。これらの結果は, 確立されたセルフ・マネージメント・スキルの汎用性という点から検討された。