抄録
幼児による乳児音声(非叫喚)の感情性に関わる情報の聴取傾向を,成人の聴取傾向と比較検討した。成人の聴取実験に基づいて分類された2カ月齢乳児の「快対不快」音声,及び「平静対驚き」音声を用い,2歳から6歳までの幼児を対象に,乳児の表情の絵を評定尺度として指さしによる聴取判定実験を行った。その結果,快音声よりも不快音声の正答率は有意に高くなるものの,「快対不快」音声ついては,年齢をおって成人の評定と同様に正答率が高くなった。一方,「平静対驚き」音声については一致率の年齢差はみられず,音声間に評定の差は見られなかった。これらのことから,幼児の乳児音声の感情性情報の認知は,快・不快に関連する音声については2歳児期に既に成人の聴取判断とほぼ同様の聴取傾向を示すものの,それ以外の感情性情報については異なった聴取傾向を持つ可能性があり,感情性の情報による違いがあることが示唆された。