発達心理学研究
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Print ISSN : 0915-9029
児童の経済学的思考の発達 : 商品価格の決定因に関する推理
藤村 宣之
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2002 年 13 巻 1 号 p. 20-29

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抄録
本研究では児童の経済学的思考の発達を,身近な商品の価格差をもたらす要因を推理させることを通じて検討した。公立小学校4〜6年生82名に対する個別実験において,生鮮食品,加工食品,工業製品の価格差に関する5つの場面を絵カードにより呈示し,例えば5月のイチゴと12月のイチゴで値段が異なる理由を推測させ,さらに補足質問により児童の回答と価格差の間に介在する要因の存在についても尋ねた。児童の回答内容を分析した結果,4年生から6年生にかけて,消費者側の要因(商品の利用価値など)と価格との因果関係の推理に加えて,生産者側の要因(供給量,コスト,利益)と価格との因果関係の推理が増加したが,利益に関する推理は6年生でも一部に限られていた。個人内の推理は学年の進行とともに様々な要因を考慮することで多様化し,また複数の要因が組み込まれることで,推理に含まれる因果系列のステップも高学年にかけて増加した。また4年生でも商品の特質に応じて,経済学的に適切な要因のいくつかを適応的に選択することが可能であった。
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© 2002 一般社団法人 日本発達心理学会
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