発達心理学研究
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胎動に対する語りにみられる妊娠期の主観的な母子関係 : 胎動日記における胎児への意味づけ
岡本 依子菅野 幸恵根ヶ山 光一
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2003 年 14 巻 1 号 p. 64-76

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抄録

妊娠期に妊婦が感じる胎動は,まだ見たり抱いたりできない我が子を直接感じることのできる唯一のものである。本研究では,胎動についての妊婦の語りを胎児への意味づけととらえ,妊婦からみた主観的な母子関係の変化を検討することを目的とした。初産妊婦33名より胎動についての882の日記を得た。この日記における胎児のからだの部位や内的状態などの語りを胎児への意味づけととらえ検討した。その結果,本データから妊娠期の2つのターニング・ポイントが見いだされた。第一のターニング・ポイントは,妊娠29〜30週であった。この時期,胎児の"足"についての語りが急増し,それまで胎児を"人間以外"の"モグラ"などとしていた記述が激減する。妊婦は,お腹の存在を"人間の赤ちゃん"として意味づけを構成するようになることが示唆される。第二のターニング・ポイントは,妊娠33〜34週で,胎児の"足"についての語りが一時減少する時期である。ここでは,胎児の"応答"との語りが,母親へと意味づけられていたものが第三者への応答との意味づけへ変化した。最後に,胎動が妊婦の意図とは関わりなく生じることそのものに立ち返り,胎児とのやりとりという視点で考察を試みた。

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© 2003 一般社団法人 日本発達心理学会
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