2003 年 14 巻 3 号 p. 294-303
本研究は,子どもの幼稚園での経験に関する母子の会話内容とその特徴を検討する。検討にあたっては,子どもが園で出会う他者および他者との関係を含む子ども自身の経験に着目し,質問紙に対する母親の報告から検討した。協力者は幼稚園児の母親235名である。7月と11月に,15種類の話題について,それが取り上げられる頻度の評定,および会話における子どもの語り方の特徴(7項目)に関する評定を母親に求めた。検討の結果,園での遊びや子どもが有能さを感じた経験('できること'),肯定的な情動などの話題の頻度がもっとも高く,他者の特徴や他者との関係もしばしば話題となることが示された。また,この会話に子どもが積極的に参加していることも示唆された。さらに,友だちの性格を取り上げる頻度が7月から11月にかけて増加すること,'保育者にしてもらったこと'に関する話題や,ある話題を繰り返す,他者の真似をするといった語り方の特徴が3歳から5歳にかけ減少するなどの結果がみられた。以上の結果は,園での子どもの経験に関する会話に多く見られる内容や特徴を示すものであり,この会話が生活の中で成立・変化し,社会化の場として機能する様子を検討するための基礎資料を提供するものと考えられる。