発達心理学研究
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幼児におけるウサギの飼育経験とその心的機能の理解
藤崎 亜由子
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2004 年 15 巻 1 号 p. 40-51

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抄録
幼児がウサギという飼育動物に対してどのように関わるのかを調べるために,実際のやりとり場面の観察を行った。幼稚園の年長児60人,年中児53人,年少児20人を対象に,ウサギ小屋に入室したときの発話および行動をビデオカメラで撮影して分析を行った。併せて,幼児がウサギの「心」についてどのように理解しているのかを調べるために個別でのインタビュー調査を行った。その結果,飼育活動中に最も多く生起した行動は,動物を「見る」と「餌を与える」というものであった。年齢ごとに比較すると,年少児はウサギを追いかけたり,餌を投げたりする行動が多く,年長児では掃除やウサギに対するコミュニケーション活動が多くなっていた。インタビュー調査の結果からは,ウサギの生態に添う文脈で生起する知覚,感情,欲求,信念については,多くの子どあたちかその存在を認めることが示された。その一方で,ウサギの心的機能に対する擬人化の高い反応は加齢に伴い減少していた。同じ年長児で比較した場合,ウサギ小屋への入室日数が多い子どもたちの方が生物学的知識を豊富に有するにも関わらず,ウサギの心的機能に対する擬人化が増え,さらにウサギに対する言葉かけち多くなっていた。以上の結果は,飼育動物に対する社会的な理解の発達という側面から議論を行った。
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© 2004 一般社団法人 日本発達心理学会
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