発達心理学研究
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向社会性についての認知はいかに行動に影響を与えるか : 価値観・効力感の観点から
伊藤 順子
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2004 年 15 巻 2 号 p. 162-171

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抄録
本研究の目的は,向社会性についての認知を価値観と効力感から捉え,これらが,向社会的行動の出現過程(気づき・動機づけ・向社会的行動)に与える影響を明らかにすることであった。7歳児157名,9歳児185名を調査の対象とした。調査は,向社会性についての認知評定(児童用),気づき・動機づけ評定(児童用),向社会的行動評定(教師用)を行った。向社会性についての認知に関しては,各評定項目(10項目)に対して,どのくらい向社会的にふるまった方がよいか(価値観),どのくらい向社会的にふるまうことができるか(効力感)の2つの質問を行った。気づき・動機づけ評定では,5つの向社会的場面を設定し,被験者の友だちはどのように感じているのか(気づき),被験者はその時どうするか,なぜそうするのか(動機づけ)を質問した。向社会的行動評定は,向社会性についての認知評定項目に対応する10項目であった。パス解析の結果,9歳児では,価値観・効力感の両面が動機づけに影響を与えていることが示されたが,7歳児では,価値観・効力感かも動機づけへの影響はみられなかった。これらの結果から,向社会的行動の出現過程においては,価値観と効力感の関与の仕方が年齢によって異なっていることが示唆される。
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© 2004 一般社団法人 日本発達心理学会
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