発達心理学研究
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死別経験による人格的発達とケア体験との関連
渡邉 照美岡本 祐子
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2005 年 16 巻 3 号 p. 247-256

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抄録

死別経験による人格的発達が起こり得るのかを明らかにするために, 死別経験のあるもの424名と死別経験のないもの40名を対象に, 質問紙調査を行った。その結果, 死別経験による人格的発達得点において, 死別経験あり群が死別経験なし群よりも高い得点を示したことから, 死別経験による人格的発達が起こることが明らかとなった。そこで, 死別経験のあるもののみ424名を対象とし, 死別経験による人格的発達の具体的な構造と, 死別経験による人格的発達と関連のある要因を明らかにするための検討を行った。その際, ケア体験との関連を取り上げた。死別経験による人格的発達の構造として, 「自己感覚の拡大」, 「死への恐怖の克服」, 「死への関心・死の意味」が見出された。また, 死別経験による人格的発達に関連する要因として「性別」, 「年齢」, 「続柄」, 「死別経験時の対象者の年齢」, 「死別納得感」, 「ケアの頻度」, 「ケア満足感」が認められた。死別経験による人格的発達と実際にどのようなケアを行ったかというケア体験との関連においては, ケア体験得点の高い群は, 得点の低い群よりも, 死別経験による人格的発達得点が有意に高かったことから, その関連が認められた。以上より, 死別経験による人格的発達とケアとの関連が示唆された。

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© 2005 一般社団法人 日本発達心理学会
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