発達心理学研究
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幼児に対する母親の分離意識 : 構成要素と影響要因
塩崎 尚美無藤 隆
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2006 年 17 巻 1 号 p. 39-49

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抄録

日本における母親の幼児に対する分離意識の構成要素を検討し,否定的,肯定的両面を見いだすことを目的とした。その結果,<子どもに対する不安・心配><母親の存在の大きさ><子どもと離れる寂しさ><分離肯定感>4つの要素が見いだされた。また,それらの要素に影響する要因を検討したところ,【伝統的育児観】と【父親の分離意識】,【子どもの対人的慣れにくさ】が影響しているが,【子どもの対人的慣れにくさ】よりも【伝統的育児観】の影響が強く,子どもの特性よりも,社会的な影響を強く受けていることが示唆された。さらに,母親の分離意識と育児ストレスとの関連を検討したところ,分離意識の中の<子どもに対する不安・心配>は育児ストレスに強い正の影響を及ぼすが,<母親の存在の大きさ>は負の影響を及ぼしていることが示されたことから,分離意識の中の肯定的な側面であることが示唆された。これらの結果は,母親がケア役割に圧倒されることなく,個として発達していくことに,どのような要因が影響を及ぼしているのかに関しても重要な示唆を与えていると思われる。

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© 2006 一般社団法人 日本発達心理学会
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