発達心理学研究
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幼児の数的発達に対する幼稚園教師の支援と役割 : 保育活動の自然観察にもとづく検討
榊原 知美
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2006 年 17 巻 1 号 p. 50-61

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抄録

東アジアの幼児の数的能力は国際的に優れていることが報告されている。本研究は幼児が数的学習を行う重要な場の1つである幼稚園に注目し,幼稚園教師の数的支援の実態とその役割について検討することを目的とした。研究1では,私立幼稚園7園14クラスを対象に1年間の保育活動の自然観察調査を実施することで,幼稚園で行われている数的活動の種類と頻度,およびそのような活動における教師の支援の具体的な方法について検討した。その結果,日本の幼稚園における教師の数的支援は,歌,製作,出欠の確認などの数的学習を目的としない教師主導の保育活動に埋め込まれる形で,特に数領域に関係したものが頻繁に行われていることが示された。さらに研究2では,研究1で観察対象となったクラスを数的支援の推定量にもとづき3群にわけ,それらのクラスに在籍する幼児の数的能力を比較することで,幼児の数的発達に対する教師の支援の効果について検討した。その結果,幼稚園で多くの数的支援を与えられている幼児は,数的支援が中程度や少ないクラスの幼児に比べて,数領域の能力が優れている傾向が示された。日本の幼稚園教師は,体系だった指導に頼らずに,幼児の数能力を効果的に促進していることが示された。

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© 2006 一般社団法人 日本発達心理学会
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