2006 年 17 巻 3 号 p. 241-251
本研究の目的は,向社会性についての認知と遊び場面での向社会的行動との関連を明らかにすることであった。調査1では,5歳児34名(男児18名・女児16名)を対象とした。向社会性についての認知を,規範的側面と評価的側面の2つの側面から査定し,遊びにおける仲間との相互作用との関連を検討した。その結果,評価的側面についての認知が低いほど,何もしていない・傍観的行動の頻度が多く,評価的側面についての認知が高いほど,連合遊びの頻度が多い傾向が示された。さらに,調査2では,5歳児29名(男児17名・女児12名)を対象に,向社会性についての認知と,困窮場面および援助方略との関連を検討した。その結果,評価的側面についての認知が高い幼児は,低い幼児よりも,友だちの困窮場面に遭遇する回数が多く,かつ困窮場面を改善する回数が多いこと,また,仲間との連合遊びの中で困窮場面に遭遇する回数が多いことが示された。以上のような結果から,幼児の向社会性についての認知は,遊び場面での向社会的行動と関連していることが示唆される。