発達心理学研究
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乳児と母親のおもちゃ遊び場面における注意の共有と母親の発話 : 7カ月齢と12カ月齢を比較して
矢藤 優子
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2007 年 18 巻 1 号 p. 55-66

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抄録

養育者と子どもの「注意の共有(joint attention)」は,子どもの言語発達をはじめとする認知発達や情緒発達に重要な役割を果たす。本研究は,母子の注意共有場面において子どもに向けられた母親の発話を詳細に分析し,注意共有パターンや子どもの月齢によってどのような違いが見られるかについて明らかにすることを目的としてなされた。23組の母子を対象として子どもが7カ月齢と12カ月齢の時に家庭訪問を行い,おもちゃ遊び場面の行動観察を行った。子どもに向けられた母親の発話を分析した結果,発話量は子どもが7カ月齢の時よりも12カ月齢の時のほうが多く,注意共有のパターン別にみた発話量にも,子どもの月齢による違いが見られた。母親は,子どもの発達的変化に応じて子どもに与える言語的情報の量や内容を変えていたことが示唆された。母親は,子どもがいずれの月齢の時でも,母子が注意を共有している対象物について言及することが最も多かったが,発話の内容を詳細に調べると,子どもが7カ月齢の時には子どもや母親の主観的な側面についての発話がより多く,12カ月齢の時には客観的情報を提供したり子どもの応答を引き出すような発話がより多く見られた。母親は,2項関係から3項関係へという子どもの発達経路に沿った形での「足場作り」を行っていたと考えられる。

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© 2007 一般社団法人 日本発達心理学会
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