発達心理学研究
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幼児の「心の理論」の発達に対するきょうだいおよび異年齢保育の影響
松永 恵美郷式 徹
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2008 年 19 巻 3 号 p. 316-327

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抄録

本研究は,3〜5歳の幼児を対象に異年齢の子どもとの接触経験による「心の理論」の発達への影響を検討した。Perner,Ruffman,& Leekam (1994)の「きょうだい間感染説」では,きょうだいの存在が「心の理論」の発達を促進するとされている。しかし,子どもの他児との接触経験はきょうだいに限らない。そこで本研究では,異年齢保育実施の保育園に通うきょうだいのいない子ども(一人っ子)17人,いる子ども40人,同年齢保育実施の保育園に通うきょうだいのいない子ども29人,いる子ども39人を対象に,誤信念課題3問(サリーとアンの課題と同型2問,スマーティー課題と同型1問),写真課題などを実施した。その結果,サリーとアンの課題と同型の誤信念課題ではきょうだいの有無と保育形態の交互作用が見られ,同年齢保育を受けていてきょうだいのいない子どもだけが他の群よりも課題通過率が低かった。一方,スマーティー課題と同型の誤信念課題と写真課題ではきょうだいの有無と保育形態の影響は見られなかった。これらの結果は,3〜5歳の幼児にとっては異年齢の子どもとの接触は,それがきょうだいでなくともサリーとアンの課題と同型の誤信念課題で測定されるような特定の「心の理論」の獲得に一定の促進的な影響を与える一方,物的表象を含むような表象操作全般に影響は及ばないと解釈された。

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© 2008 一般社団法人 日本発達心理学会
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