発達心理学研究
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12ヶ月時から24ヶ月時における子どもの行為制御の発達 : 親子間の事物をめぐる葛藤の変化に注目して
塚田-城 みちる
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2008 年 19 巻 4 号 p. 331-341

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抄録

子どもの行為制御の発達過程における自他理解と内化の関連を,親子の事物を介する関わりを通して検討した。3組の母子に協力を得て,事物を介した遊び場面を生後12ヶ月時から24ヶ月時まで縦断的に観察した。分析は,親の注意を誘導する子どもの指さし(誘導的指さし)と行為制御出現の関連,および,事物を介した子どもの行為を親が制止する葛藤の変化に注目して行った。分析の結果,子どもに誘導的指さしが初出する時期に,親に注意を向けた行為制御が出現した。やがて親に注意を向けずとも行為制御ができるようになり,24ヶ月時に制止をめぐる発話を伴った行為制御が見られた。また葛藤においては,親が介入すると,子どもが不快情動を伴って抵抗するようになった。そこで親は介入するけれども遊んであげるようになり,それが子どものふざけ行為と呼応した。やがて24ヶ月時に近づくと,言葉を介して交渉することが見られた。以上のことから,行為制御の発達過程は,誘導的指さしが出現する時期に応答主体としての他者意識と見られている自分の意識が向上すること,子どもの抵抗に応じるかたちで親が介入的遊びを生じさせること,その関わりを子どもが取り込んで親が介入的に遊んでくれると予期できることに支えられて内化が進むことによると考えられた。

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© 2008 一般社団法人 日本発達心理学会
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