発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
30ヶ月児の親子三者間相互行為への参加と親から提供される言語環境
上村 佳世子加須屋 裕子
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2008 年 19 巻 4 号 p. 342-352

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抄録

本研究では,幼児が親および兄との親子三者間相互行為に参加し,どのように他の参加者と発話を交換するのかを検討することを目的とした。30ヶ月齢の男児を対象として20組の家族のおもちゃを介した自由遊びの相互行為の家庭観察をおこなった。母親と父親にそれぞれ交代して2名の子どもと遊んでもらい,母親場面および父親場面における親の対象児への発話数やその発話形式を比較するとともに,対象児の会話への参入ときょうだい間の様々な形式の発話の頻度を調べた。その結果,母親参加時と父親参加時における子どもの行為にも,両親の2人の子どもへの発話行為にも差異が示された。母親は対象児に優先的に発話を向けたほか,母親場面では2人のきょうだい間の発話の頻度も高かった。父親は対象児の発話への応答性が低く,父親参加場面では対象児が自発的に会話に参入しようとしたり親に対して長い文節の発話を向けたりした。この結果は,両親のことばかけや応答性が,幼児に質の異なる言語環境を提供していることを示唆していた。家庭内での異なる知識や意図をもつ複数の他者との相互行為への参加は,子どもにとってコミュニケーションの訓練の機会となるものと考えられる。

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© 2008 一般社団法人 日本発達心理学会
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