発達心理学研究
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Print ISSN : 0915-9029
母親の情動表現スタイルが幼児の気質に及ぼす影響
田中 あかり
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2009 年 20 巻 4 号 p. 362-372

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抄録

家族と共にいる時の母親の情動表現スタイルが幼児の各気質側面にどのように影響を及ぼしているのかを検討した。幼稚園に通う3歳から6歳の計311名の幼児の母親に,母親の情動表現スタイルについての質問(Self-Expressiveness in the Family Questionnaire:SEFQ)と子どもの気質についての質問(Children's Behavior Questionnaire:CBQ)で構成される質問紙調査を行った。その結果,(1)自己中心的で不快感を与える情動表現スタイル得点の高い母親の子どもは自己コントロール得点が低く,親和的・共感的な情動表現スタイル得点の高い母親の子どもは自己コントロール得点が高い,(2)自己中心的で相手に不快感を与える情動表現スタイル得点の高い母親の子どもは否定的情動の生じやすさ得点が高いが,母親の親和的で共感的な情動表現スタイル得点と子どもの否定的情動の生じやすさ得点に関連は見られない,(3)子どもの活発さ・積極性得点はどちらの情動表現スタイル得点とも関連は見られない,(4)子どもの気質の3側面,自己コントロール,否定的情動の生じやすさ,活発さ・積極性は負の相関関係にある,ことが確認された。これらの結果から情動表現スタイルの背景に母親の子どもの情動の調整者としての役割が考えられることを挙げ,子どもの気質を支える環境について議論した。

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© 2009 一般社団法人 日本発達心理学会
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