2009 年 20 巻 4 号 p. 373-381
母親の抑うつ状態に対するマスタリーの効果について,対処の視点から検討した。マスタリーはさまざまな出来事へのコントロール感を表すものであり,母親の抑うつ度を低減する働きをする心理的要因と考えられる。妊娠期から出産1ヶ月後にかけてマスタリーと抑うつに関する質問紙調査を行った130名の初産婦のうち21名に対し,出産18ヶ月後の時点でストレスや対処に関する半構造化面接を行った。マスタリー高群9名と低群5名を分析対象者とした結果,マスタリーの高い母親は,マスタリーが低い母親に比べて(1)問題焦点型の対処を多く用いていること,(2)抑うつ状態になりにくいこと,(3)対人ネットワークを拡大する行動を多く用いており,より広いサポート源からの情緒的サポートを獲得していること,(4)マスタリーが高くても,状況の改善がみられない場合に抑うつ度が高くなる可能性があることが示唆された。これらの結果を踏まえ,母親の抑うつ状態に対する介入や支援のあり方を中心に考察を行った。