発達心理学研究
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青年期の居場所感が心理的適応,学校適応に与える影響
石本 雄真
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2010 年 21 巻 3 号 p. 278-286

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抄録

本研究は,教育臨床や心理臨床の領域での視点から捉えた居場所感が青年期の学校適応,心理的適応に対してどのような影響を与えるのかについて検討することを目的とした。「ありのままでいられる」ことと「役に立っていると思える」ことから居場所感を捉える尺度を作成し,家族関係・友人関係・クラス関係・恋人関係といった対人関係の種類ごとに居場所感と学校適応,心理的適応との関連を検討した。大学生188名,中学生384名を対象に関係ごとの居場所感,学校生活享受感,自己肯定意識について測定した。その結果,対人関係の種類ごとに自己肯定意識や学校生活享受感に影響を与える居場所感の因子が異なっていることが分かった。中学生では,自己肯定意識に対して家族関係での居場所感が概ね促進的な影響を与えていたが,大学生では家族関係での居場所感はほとんど影響を与えていなかった。また中学生では,学校生活享受感に対して複数の対人関係における居場所感が促進的な影響を示していたが,大学生ではいずれの対人関係における居場所感についても学校生活享受感に対しての影響がみられなかった。中学生においては,男子はクラス関係での自己有用感の他に家族関係での本来感が学校生活享受感に促進的な影響を示していたが,女子は友人関係での本来感が影響を示していた。これらのことから,年齢,性別ごとに居場所として重要となる対人関係の種類が異なるということが明らかになった。

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© 2010 一般社団法人 日本発達心理学会
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