発達心理学研究
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1歳児における叙述の指さしと他者との共有経験理解との関連
福山 寛志明和 政子
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2011 年 22 巻 2 号 p. 140-148

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抄録

ヒトは,1歳頃から関心ある対象へ指さしを行うようになる。この行動は「叙述の指さし」と呼ばれ,欲しい対象を求める「要求の指さし」とは区別される。叙述の指さしは,他者の注意を対象へ向けさせ,関心・経験を共有するための行動と考えられてきた。しかし,他者が関心,経験を共有できる存在であることを理解した上で,乳児は叙述の指さしを行っているのだろうか。こうした点を明らかにするため,本研究は,1歳前半(34名),1歳後半(28名)の児を対象に,指さし行動の生起および他者との共有経験の理解度との関連を調べた。乳児と向かい合った実験者の視野外に対象(ターゲット)を提示し,それを目撃した乳児の指さし行動を記録した。他の2つの対象(ディストラクタ)は,通常のインタラクションの中で両者に共有された。最後に3つの刺激すべてを乳児に提示し,1つを自由に選択させた。1歳後半児の多くは,乳児が指さした対象に実験者が注意を向けた時点で指さしを止めた。1歳前半児は,実験者が対象に注意を向けても指さしを継続する傾向にあった。また,実験者の注意に応じて指さしを止めた児は,他者と特別な経験として共有していたターゲットをディストラクタよりも多く選択した。他者との共有経験の理解とその行動表出との発達的関連について議論した。

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© 2011 一般社団法人 日本発達心理学会
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