発達心理学研究
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5歳児と成人を対象とした瞬間的な個数の把握(サビタイジング)に対する言語処理の干渉
郷式 徹渡邉 静代
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2011 年 22 巻 3 号 p. 205-214

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抄録

少数の物の個数を把握する場合,一つずつ数える(counting)他に,瞬間的に個数を捉えるサビタイジング(subitizing)を用いることがある。サビタイジングは視空間的な知覚処理過程として考えられることが多いが,一方で言語的な処理過程に干渉されることが示されている。本研究ではサビタイジングと言語的な処理過程との関係について検討することを目的とした。実験1では5歳児24名を対象に,実験2では成人16名を対象に,サビタイジング時に言語的な処理過程を必要とする二重課題として無関連言語音を聴覚提示した。また,サビタイジングの対象として無意味な図形によって構成された刺激と有意味な図形によって構成された刺激を用いて,数に関わらない意味処理がサビタイジングに干渉するかを検討した。その結果,幼児では無関連言語音の言語的な処理か有意味刺激の意味処理のいずれかのみでサビタイジングに干渉が生じた。一方,成人では両方そろったときにだけ干渉が生じた。これはサビタイジングと無関連言語音の処理および意味処理が並列に行われるとともに,サビタイジングに割り当てられる処理容量には限界があることと成人では5歳児に比べて処理容量が大きいために生じると解釈された。

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© 2011 一般社団法人 日本発達心理学会
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