発達心理学研究
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物の取り合い場面における幼児の自己調整機能の発達
長濱 成未高井 直美
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2011 年 22 巻 3 号 p. 251-260

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抄録

本研究では,就学前期における自己調整機能の発達を,自己主張,自己抑制,自他調整の3側面から検討することを目的とした。3歳から5歳の幼児120名を対象に,仮想課題を用いて,自分が遊んでいた玩具が取られてしまう自己先取場面,他児が遊んでいる玩具で遊びたくなる他者先取場面,他児と同時に玩具を見つける対等場面の3場面を想定させ,自分ならばどのようにするか,口頭と選択肢で回答を求めた。その結果,口頭回答については,対等場面で,5歳児に自他調整の回答が多く見られたが,3歳児では自他調整の回答は少なかった。5歳児では,先行,後行,順番など,自分も相手も交互に物が使えるように自他関係を調整する回答が多く出現しており,この時期に自他調整の方略が発達することが示唆された。また4歳児,5歳児の口頭回答では,他者先取場面において,依頼という方法で自己主張が多く見られ,対等場面に比べても自己主張は増加していることから,場面の違いに応じた自己主張をしていることがわかった。一方,3歳児の口頭回答では,特に他者先取場面で無反応が多く見られ,先に物を保有する他者には,対処法を見出せない様子が窺えた。最後に,選択回答については,自己先取場面において,行動的主張の回答が,3歳児で多く見られ,5歳児において少ないことが示された。

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© 2011 一般社団法人 日本発達心理学会
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