発達心理学研究
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母子通園施設を利用した母親の心理状態 : 支援過程において障害児を持つ母親の表出された気持ちから
大鐘 啓伸
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2011 年 22 巻 3 号 p. 308-317

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抄録

障害児の早期療育に合わせてその子どもの母親に,子どもとの関係性や障害受容を促進するよう支援していくことが必要である。特に,母子通園施設は,障害告知後の支援として初期にあたるため,母親の心理状態を踏まえた支援を行うことが課題となる。そこで,本研究では,母子通園施設を利用した母親の気持ちから,支援の過程で変化する母親の心理状態を検討することとした。まず,母子通園施設を利用した52名の母親の手記から,入園時7項目,通園中5項目,卒園時5項目に母親の気持ちを分類評定した。次に,その結果について数量化III類およびクラスター分析を行ったところ,<自責解放>,<育児困難感>,<関係発達的育児希求>,<育児効力感希求>の4つのカテゴリーが抽出された。このうち,3つの時期と関連がなかった<自責解放>については,支援よって変化していった過程を2つの事例から検討した。それらのことから,支援の過程において,母親は子育てや障害に関して様々な葛藤を抱いていたが,第三者からのサポートを感じ,子どもへの共感性を促進させていった。また,母親の心理状態には,母親の養育観と障害認知に関する障害観が相互作用していることが推測された。そのことを踏まえて子どもと母親の双方の気持ちに共感し,母親がサポートを受けている気持ちを持てるように支援する必要があると考えられた。

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© 2011 一般社団法人 日本発達心理学会
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