発達心理学研究
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授業研究の事後協議会を通した小学校教師の談話と教職経験 : 教職経験年数と学校在籍年数の比較から
坂本 篤史
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2012 年 23 巻 1 号 p. 44-54

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抄録

本研究では,小学校の校内授業研究会の事後協議会(以下,協議会)を対象に検討することで,ある学校の教師文化への習熟が教師の発達を支える社会的環境に与える影響を明らかにした。協議会談話の「実践の表象」(Little,2002,2003)に着目し,教職経験年数および学校在籍年数との関連性について,2つの予想を立てて分析した。データは,ある公立小学校の協議会6回の談話記録と,参加教師全員に実施した直後再生課題の結果を用いた。結果,学校在籍年数と授業の問題点,可能性に関する発言とに正の相関が認められた。また,教職経験年数と授業の解釈,代案に関する発言とに正の相関が認められた。学校在籍年数と授業の問題点,可能性,代案を提示する発言の被再生数とに正の相関が認められた。教職経験年数の長い教師は,豊富な知識に基づいて,授業の解釈や代案を提示することが示された。学校在籍年数の長い教師は,所属校の授業に対する視点や授業理念を示す発言をし,他の教師に聴かれ記憶されることが示された。本研究の意義は,第1に教師の発達を支える社会的環境である協議会談話について,ミクロ水準で実時間に即した分析を行った点てある。第2に学校在籍年数を指標とした分析を行うことで,教師の発達を学校の文脈から捉える視点について傍証した点である。

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© 2012 一般社団法人 日本発達心理学会
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