発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
原著
知的障がい者のきょうだいのライフコース選択プロセス
中年期きょうだいにとって,葛藤の解決及び維持につながった要因
笠田 舞
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2013 年 24 巻 3 号 p. 229-237

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抄録
本研究では知的障がい者(以下,同胞)の兄弟姉妹(以下,きょうだい)であることがきょうだいのライフコース選択をどのようなプロセスで導いていくか,また選択の際に葛藤の解決や維持に影響を及ぼしている要因について明らかにすることを目的とした。中年期のきょうだい男女14名を対象として個別に半構造化面接によるインタビュー調査を行い,時間を捨象せず人間の多様性や複雑性を扱うための方法論(サトウ,2009)である複線径路・等至性モデルを援用し分析を行った。進路・職業選択の時期は原家族に対する役割の転換期であり葛藤的体験となりやすいが,親からの働きかけによって主体的なライフコース選択に広がることが示された。一方で孤独感により成人期以降も葛藤的体験は維持されるが,同胞の養育の中心的存在である母親が親役割を降り始めることを契機にあくまでも自己の人生を主軸に親亡き後の現実に対処していこうとする,きょうだいが主体的に選択したケア役割の取り方に変容する。親はきょうだいにとって同胞のケア提供者以外の方向へ選択肢を広げそこへ導く存在でもあるが,ケア提供者に根強く束縛する存在でもあり,ライフステージを越えたキーパーソンの役割を果たす。また同胞ときょうだいが兄弟姉妹の関係で在り続けるためには,同胞に必要とされるサポートの在り方についてきょうだい同士で情報交換でき,きょうだい自身がサポートされる機会の拡充が必要である。
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© 2013 一般社団法人 日本発達心理学会
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