発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
原著
主観的感情体験の発話内容分析から捉えた一般大学生の自閉的傾向とアレキシサイミア傾向の関連性の検討
西田 麻野
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2015 年 26 巻 4 号 p. 300-311

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抄録

本研究では,自閉的な傾向の高い一般大学生のアレキシサイミア傾向を中心とした感情面の特徴を関係的視点から記述を行い,こうした大学生の他者との関わりにおける様々な課題や困難に対応するための手掛かりを得ることを目的とした。その際,一般の大学生20名を対象に質問紙調査と主観的感情体験についてのインタビューを行い,その発話内容分析を行った。アレキシサイミア傾向を測定するTAS-20,自閉的傾向を測定するAQと,発話内容分析によって得られた“感情言語化数”との間の相関分析の結果,これらの尺度得点と“感情言語化数”との間で負の相関が示され,一般大学生の自閉的傾向の高さとアレキシサイミアに関係する感情言語化の少なさには関連があることが示された。さらに“感情面”と“関係性”に関する発話内容の特徴を捉えるために,発話内容分析のデータに基づき多次元尺度構成法(MDS)を行った。その結果,発話上でアレキシサイミアを中心とした感情的な困難が示された二つの群には,それぞれ異なる状態像があることが示された。一つ目の群には,自他関係に積極的に関わってはいるものの,感情の表現に困難がある特徴が示され,二つ目の群では自他の内面や関係性に関わろうとせず,関係的に孤立した特徴が示された。これら発話上の特徴から,自閉的傾向のある大学生のアレキシサイミア傾向には異なるタイプがあり,それらに応じた対応の必要性が示された。

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© 2015 一般社団法人 日本発達心理学会
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