2016 年 27 巻 3 号 p. 221-231
本研究の目的は,大学生活の重点によって大学生を分類し,自立欲求や全能感,後れをとることへの不安,モラトリアムの状態,学習動機づけの比較を行うことで,現代青年のモラトリアムの多様性を明らかにすることである。大学生624名を対象に質問紙調査を実施し,大学生活の重点7標準得点をもとにクラスター分析を行ったところ,4クラスターが抽出された。クラスター1は自己探求や勉強に重点をおき,自己決定性の高い学習動機づけをもっていた。クラスター2はいずれの活動にも重点をおいておらず,大学での活動に積極的に取り組めていない青年であると判断された。クラスター3はすべての活動に重点をおき,自立欲求や後れをとることへの不安をもち,内発的動機づけだけでなく,外発的動機づけももっていた。クラスター4は他者交流や部活動,サークル活動に重点をおき,全能感が強いが,学業とは異なる領域での活動を通して職業決定を模索していた。これらの結果から,クラスター1はEriksonが提唱した古典的モラトリアムに相当し,クラスター4は小此木が提唱した新しいタイプのモラトリアム心理によるモラトリアムであり,クラスター3は近年指摘されている新しいタイプのモラトリアム(リスク回避型モラトリアム)であると考えられた。